2022 Fiscal Year Research-status Report
南東北地域の寺社奉納算額の史料的特性の明確化と地域史への新たな展開
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22K00867
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
徳竹 亜紀子 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70552488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷垣 美保 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70369982)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 算額 / 和算 / 赤外線カメラ撮影 / 史料学 / 絵馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が扱う算額とは,奉納者が和算の問題や解答方法を書いて神社仏閣に奉納した絵馬の一種で,近世後期から昭和初期頃まで奉納された。本研究では,これまで歴史研究にほとんど活用されてこなかった算額について,主に南東北を対象として調査と研究をおこない,歴史研究の素材としての有用性を提示することを目指す。昨年度の成果は①算額調査,②学会発表,③論文の公表に大別される。 ①寺社での算額調査の実施:昨年度は宮城県内でもっとも多い5点の算額を所蔵している丸森町の小斎鹿島神社と,算木の図が書かれた珍しい算額を所蔵してる仙台市若林区の沖野八幡神社での算額調査を実施した。調査では,算額の寸法を計測し,デジタルカメラおよび赤外線かめらで撮影をおこなう。過去に刊行された資料集の文字との異同もできる限り確認した。 ②学会発表:秋に開催された全国和算研究大会で,歴史研究者である研究代表者と数学研究者である分担者がそれぞれの研究視点から算額の研究発表をおこなった。 ③論文の公表:昨年度は,調査に基づく2本の論文を発表した。論文では,調査の概要紹介と算額の内容に関する数学的考察,そして算額の検討から再構築される地域の歴史像について論じることができたと自負している。 算額のように学問的専門性が高い内容を有する歴史資料を扱うには,歴史研究者だけではなく,専門分野に精通した研究者の協力が不可欠である。両者が協力しあうことによって新たな知見が得られると確信して本研究を計画したところであるが,初年度を終えてその確信をますます強くできる成果を得ることができたと感じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は調査回数は多くなかったものの,これまで重ねてきた調査成果も併せて,宮城県南部の調査を終わらせることができた。現存する算額の数量を鑑みると,順調な進捗となっている。また,算額や和算の研究発表をおこなう学会としてもっとも規模が大きい全国和算研究大会での発表も大きな成果となった。全国和算研究大会はここ数年コロナ禍で学会自体が中止だったが,昨年度はようやく集合形式で開催された。その学会で研究発表できたことによって,本研究を和算研究者に周知することができた。 以上により,おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)南東北算額データベースの作成 宮城県分は完了。山形県・福島県・岩手県南部(一関地域)のデータベースを作成する。算額に書かれる問題が別の和算書や算額の問題と類似している例が多々見られるため,データベースは算額ごとではなく枝番として問題ごとの番号も付し,且つ冒頭12文字を入力することで同じ問題を抽出できる仕組みを構築する必要がある。 2)算額調査 2023年度は宮城県中部~北部,2024年度は宮城県北部~岩手県南部を調査する。岩手県和算研究会からの情報提供も大いに活用し,調査を円滑に進める。赤外線カメラでの算額撮影によって,既存の調査では判読できなかった文字の確定が期待できるので,できる限り全点調査をめざす。 3)南東北地域の算額資料集の作成と公開 山形県,福島県の和算研究会と協力しながら,南東北の算額資料集を作成する。翻刻作業を歴史学を専門とする研究代表者がおこない,解説を数学研究者である分担者がおこない,それぞれの専門性を活かした資料集を完成させる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた遠方への宿泊を伴う調査をやめて、日帰りできる近隣地域での調査を中心にしたことにより、交通費や宿泊費を次年度にまわすことになった。また、購入した書籍のうち、古書で購入した分などが予定より安価に購入できたことも、次年度使用額が生じた理由のひとつとなっている。 もともと設備をそろえるために初年度の予算を多く、2年目以降の予算を少なめに設定してあったため、研究計画に大きな変更は必要ないと思われる。今後も研究の推進に尽力していきたい。
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Research Products
(5 results)