2022 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半の北海道・千島沿岸を中心とするラッコ・オットセイ猟に関する基礎的研究
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22K00868
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 伸一 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (30291909)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 海獣猟 / 開拓使 / 水産資源 / 毛皮利用 / 北太平洋 / 千島列島 |
Outline of Annual Research Achievements |
18~20世紀初めにかけて太平洋北部の海域において英国(現在のカナダ)・米国など欧米諸国と日本の船がオットセイとラッコを対象に狩猟活動をおこなった。これらのうち、19世紀後半の北海道・千島・樺太と東北地方太平洋岸を中心とした地域について、以下の三点を解明する。 ①開拓使(1869~82年)とそれに続く時期の北海道と千島列島沿岸における海獣猟について、北海道立文書館が所蔵する開拓使文書を主な史料として、開拓使の諸施策や狩猟活動の実態を明らかにする。具体的には、英米など外国船によるこの海域におけるラッコ・オットセイ猟の取締り、択捉島のアイヌ民族など民間人による猟獲品の買入れ、千島列島において直営で実施したラッコ猟の実態、猟獲品の加工方法の改良や製品の輸出などである。 ②千島・北海道・樺太の沿岸や東北地方太平洋岸などでラッコやオットセイの狩猟を展開した英米などの海獣狩猟船について、その母港や寄港地、船の規模や装備、狩猟地点や猟獲数、乗組員の構成などの実態を明らかにする。 ③上記について、千島列島や北海道の先住諸民族による従来からの狩猟活動との関わり、水夫や狩猟者としての参加状況などを明らかにする。 北太平洋のラッコやオットセイは英米露など各国の船が狩猟対象として各国間の軋轢を生じ、19世紀半ばにはこれら各国による自国領内での資源管理や国際的な取り決めを模索する動きがあった。その動向は開拓使の海獣に対する政策のほか、シカなど他の鳥獣に対する政策にも影響している痕跡がある。この課題に取り組むことにより、人間と野生生物との関係史、海を介して多民族が関わる地域間交流史に新たな知見を得ることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開拓使文書など北海道立文書館所蔵文書、外務省外交史料館所蔵の外交文書について、本課題に関係する史料の所在状況を把握した。そのうち、主要な史料である開拓使文書については、1875年頃までの関係文書の調査を進め、この時期までの外国船の活動状況やそれに対する開拓使の対応状況などの概要を把握するに至っている。この時期すでに日本領であったエトロフ島における外国船の主にラッコを対象とした狩猟活動や座礁事故の実態、それに対する開拓使や外務省、在函館の英米領事館などとのやりとりについて分析を進め、1876年以降の史料の調査も継続して進行している。以上から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き開拓使文書とそれに続く三県一局期の文書の調査を進める。当面は特に、1875年以降に開拓使がラッコ猟の直営に乗り出す経緯とその猟業の実態、1875年5月の千島・樺太交換条約締結がこの地域の海獣猟に与えた影響、ラッコ皮の加工方法や海外市場についての情報収集の状況などに重点を置く。並行して、外交文書について前年度に集積した開拓使文書との照合をおこない、日本の外務省と開拓使の外国狩猟船に対する対応について分析を進める。
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Causes of Carryover |
作業用にPCを購入することを計画していたが、研究環境の基礎を整えるためのその他の物品の購入や調査旅費の支出を優先したため、購入に至らなかったのが主な理由である。次年度については、収集史料の分析や整理を進めるために必要なPCもしくは周辺機器(ディスプレイやスキャナ )の仕様などの検討を早期におこない、購入する計画である。
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