2022 Fiscal Year Research-status Report
先秦時代における政治思想の形成と展開-清華簡墓主個人の精神的内面の視角から-
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22K00908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小寺 敦 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (30431828)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 清華簡 / 邦家処位 / 治邦之道 / 摂命 / 先秦時代 / 政治思想 / 楚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度は新型コロナウイルス感染症の流行がいまだ終熄せず、研究に対する障害は少なくなかったが、可能な範囲で計画を予定通り行うよう努めた。まずは清華簡第8冊所収の出土文献の釈文作成を進め、本年度の研究の基礎とした。その成果として「清華簡『邦家処位』訳注」および「清華簡『治邦之道』訳注」を所属機関の紀要に発表した。これに加えて関連文献のテキスト型データベースを作成した。秋以降、台湾との間の渡航規制が緩和されると、台湾大学から招聘を受けた。それに応じて12月に現地へ赴いて研究報告・講演を行い、博物館で資料調査を実施し、現地の研究者と交流するなどができた。台湾大学哲学系では「先秦時期政治思想的形成与展開:以清華簡墓主的精神世界為切入点」の講演を行い、本研究による先秦時代の政治思想研究の方法論と意義について丁寧に説明した。出土地の不明である清華簡の墓主を検討することに困難が伴うのは当然であるが、清華簡が特定個人への副葬品であるという視点は、清華簡諸篇の史料的性格を知る上で欠かせないものである。それに続いて同大学で「關於清華簡《摂命》的成立問題」を発表し、清華簡の一篇である《摂命》について、本研究の方法論および目的と照らし合わせながら、その資料的性格について論じた。清華簡《摂命》は、西周金文に見られる冊命形式から大きく外れ、かつ東周期以降に頻繁に使用される語を含むことから、西周期の体裁をとった「擬古的」な東周期の文献である可能性がより高いと考えた方が合理的である。政治大学中文系では、「戦国楚簡文本和思想的解釈問題和可能方案:以清華簡《邦家処位》為例」を報告し、既に原稿が完成していた出版前の清華簡《邦家処位》の上記訳注をもととして、そのテキスト読解上問題となり得る箇所について自説を述べた。続いて参加した現地の専門家と討論を行い、研究上非常に有益なご意見を頂戴することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、今年度は、令和3年度までの申請者の到達点を起点として、清華簡の報告書第8冊『清華大学蔵戦国竹簡』(捌)(中西書局、2018年11月)に収録された文献である『摂命』『邦家之政』を基本資料として検討することなっていた。『摂命』は経書である『書』に類似し、『邦家之政』は政治論を論ずる。研究計画で述べたように、『摂命』の訳注は令和3年度に原稿が仕上がっており、同年度内に発表することができたが、『邦家之政』のそれについても訳注作成に努め、同様に同年度内に完成する結果となった。予定より早く上記訳注が完成したため、当初の予定通り『摂命』のテキスト型データベースの作成を進めつつも、次年度以降に執筆することを予定していた『邦家処位』『治邦之道』の訳注についても、今年度内に開始し、かつ仕上げて発表することができた。同時に、既に完成したその訳注をもとに、『摂命』に関する論考執筆も行う余裕ができた。今年度初めには、今年度内に海外で研究報告をすることは難しいと想定していたが、幸運なことに、年度後半に台湾との往来がしやすくなり、かつ台湾大学から研究発表と講演のお誘いをいただいた。そこでその得難い機会を利用し、本研究の内容や意義について講演すると共に、『摂命』の史料的性格や『邦家之政』の釈読に関する問題について、現地の研究者と議論を交わすことができた。以上、当初の想定より研究を取り巻く環境が改善されたこともあり、計画より早く研究を進めることが可能になった次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画通りに進める所存である。但し、初年度において予定より早く研究が進んだため、それに合わせて、清華簡の報告書第8冊『清華大学蔵戦国竹簡』(捌)(中西書局、2018年11月)所収の出土文献の訳注作成については、今年度は来年度に予定されていた『天下之道』『虞夏殷周之治』についても手掛けることとしたい。これに合わせて当初の計画通り、『邦家之政』『治邦之道』のテキスト型データベースの作成も進めることにする。これらの作業により、既に訳注・データベース作成の終わった篇については、先秦時代の楚地域における政治思想の特質や汎地域的なその共通点を見出すことも行うことになる。ただ、初年度においてはこれらも若干手掛け始めたため、今年度はそれを引き継いで進めていくことになる。また既に海外の複数の団体からシンポジウム報告の依頼を受けているため、本研究の成果を発表する場として利用したいと考えている。また万一新型コロナウイルス等、国際情勢の変化により、再び出国に制限が加えられるようになった場合は、海外シンポジウムへのオンライン参加が可能ならばそれを利用し、それすら不可能であれば、他の発表の機会を得られるよう、でき得る限り試みることにしたい。
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Causes of Carryover |
主たる理由は、海外出張の際、招聘先より旅費が支給されたため、本研究初年度の旅費が計画より少なく済んだためである。次年度は、この次年度使用額を旅費に含めて使用する予定である。
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Research Products
(5 results)