2022 Fiscal Year Research-status Report
「周縁部」の視点から見る北部豪州と日本人年季契約労働者に関する歴史基盤研究
Project/Area Number |
22K00925
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
村上 雄一 福島大学, 行政政策学類, 教授 (10302316)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | オーストラリア / 日豪 / 日本人移民 / 周縁部 / 南洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本人移民や出稼ぎの地であったカナダやアメリカなどに比べて研究が大きく遅れている白豪主義時代の北部豪州における日本人労働者の移動と海洋資源の開発について歴史的な精査を行うことである。 令和4年度においては、真珠貝産業に従事するために越境移動した日本人諸集団の動態を精査し、「外国人労働者」として彼らが真珠貝産業の開発や発展において経験した「差別」と「被差別」の歴史的経緯や事象を明らかにすることを目的とした。 まだコロナ禍が十分に鎮静化する前だったということもあり、まずは年間を通して日本で入手可能な書籍やオンラインによるオーストラリア側の公文書や新聞記事検索等で,主要な研究対象である北部豪州における日本人年季労働者に関する文献・資料と情報の確認および収集を中心に行った。 それ以外の研究活動としては、まず7月に開催されたオーストラリア学会全国研究大会に参加、最新の日豪関係研究動向を確認するとともに、研究者との情報・意見交換を行った。9月にはコロナ禍以降初めて入国が緩和されたオーストラリアのダーウィンとブリスベンで現地調査を実施、現地の公立図書館や大学附属図書館等で日本では入手困難な文献・資料の調査・収集を行った。また、現地研究者とも情報・意見交換を行った。 10月には国立民族学博物館で日本人年季労働者が多く渡った豪州北部トレス海峡をテーマとしたオーストラリア学会関西研究例会に参加、最新研究の情報収集や研究者との意見交換を行った。11月には名古屋商科大学で行われた研究会(「国境を越えた地縁社会ー豪州出稼ぎ労働者を繋いだ日本人商店主の現地適応戦術」)で9月に行ったダーウィンおよびブリスベンでの現地調査結果について報告、その中で研究成果の一部を報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本における通常の文献・資料等の収集のほかに、コロナ禍以降できなかった研究者との対面による情報収集・意見交換や、オーストラリア現地での文献・資料収集が3年ぶりに実施できたこと、および、初年度ではあるが研究会で成果の一部を報告できたことことから、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度同様、年間を通しては日本で入手可能な書籍やオンラインによるオーストラリア側の公文書や新聞記事検索等で,主要な研究対象である北部豪州における日本人年季労働者に関する基本的な文献・資料と情報の確認および収集を行う。特に、この一年ほどの間に、日本の国立国会図書館等でもデジタル化が急速に進展したこともあり、これまで入手困難だった明治期の文献・資料等が以前よりも検索や入手が容易になってきた。これまでオーストラリアの日本人年季労働者についてはオーストラリア側の文献や資料に依拠することが多かったが、それらと日本側の文献・資料を突き合わせることで、従来よりもより精度の高い研究が可能になるよう研究推進を行う予定である。 またコロナ禍以降の日本国内での移動の制約が、令和5年度に入り、原則、廃止される予定でもあることから、オーストラリアのみならず、日本人年季労働者を多く輩出した和歌山県や愛媛県など、日本国内での現地調査も必要に応じて行えればと考えている。
|
Causes of Carryover |
本助成金の交付決定前に、コロナ禍によって別の研究旅費が繰り越されることが決まっており、今年度はその研究旅費が本研究にも活用できた結果、次年度使用額が生じた。 コロナ禍が落ち着いてきたこともあり、日本およびオーストラリアでの現地調査の期間を延長するなど、申請当時の計画よりも充実させる形で、翌年度分として請求した助成金を使用する計画である。
|