2022 Fiscal Year Research-status Report
植民地化によるインド西部の農村社会の変容:前植民地期からの連続的考察
Project/Area Number |
22K00928
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 道大 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30712567)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | インド / マラーター / ボンベイ管区 / 植民地化 / 土地制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、村・郡の税記録に関して、すでに入手済みの記録の納税者リストの入力作業を開始した。関連文献に関しては、新たに出版された文献を中心に入手した。税記録から見える農民・職人の活動と植民地下での変化が本研究での注目すべき点の一つとなるため、商業・農業に関わる文献の収集を開始し、天候や飢饉・疾病に関する文献などを幅広く入手した。この文献の分析する中で、モンスーンが商業・農業にともに大きな影響を与えていたことが明らかになり、雨季・乾季など季節の周期に応じて、これまで収集してきた農業および商業記録を統合する着想を得た。こうした視点により農閑期の農民の活動に注目することが可能となり、地理情報システム(GIS)による空間的統合に並ぶ新たな史料統合の手法を得た。 また農業に関しては耕作地のみならず荒蕪地・休閑地の利用を分析することで、農村における軍人・軍隊も関わる土地利用の在り方を示して徴税業務と軍務の関係を考察することで、中央・地方政府にとっての農村の役割を再考した。これまで入手したマハーラーシュトラ州立文書館プネー分館(Maharashtra State Archives, Pune)および同州立文書館ムンバイ本館(Maharashtra State Archives, Mumbai)の史料を比較・照合することで、前植民地期のマラーター支配下での徴税業務担当者と軍人の対立が、形を変えて植民地期の英領支配下にあっても継続していることを示した。前植民地期から植民地期への農村社会および農地利用の継続と変化を考察する端緒を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データベースを用いた史料収集は十分に行うことができたが、国内の種々の研究機関に所蔵されている史資料を十分に集めることができなかった。次年度は、海外の文書館での史資料調査を開始すると同時に、国内の史資料調査を効率的に進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、海外での調査を十分に行うことが可能となるため、インドおよびイギリスでの史資料調査に重点をおいて本課題の研究を進める。特にオンラインでのアクセスが困難であったインドのマハーラーシュトラ州立文書館での史料収集を行う。初年度の成果として、時間(季節)によって異なる史資料を結合する着想を得た。この結合を実行するには、これまで収集してこなかった時季を明確に示す税記録が必要となるため、現地語の記録を同州立文書館プネー分館において、英語の記録を同州立文書館ムンバイ本館で収集する。 これと同時に、初年度の課題として残った国内の研究機関での史料収集を、海外での史資料収集の状況と連動させながら効率的に行っていく。
|
Causes of Carryover |
初年度においては、新型コロナウイルスによる行動制限に関わる問題が残っていた。国内の研究機関の図書館であっても学外者の利用に制限がある場合があり、十分な調査を行うことができなかった。海外からの史資料注文に関して、本課題に必要なデータが遠隔では見出すことができなかったため、旅費や資料購入費等で使用額が減少した。次年度は、海外での調査が可能となるため、初年度に購入予定であった史資料を現地で複写・購入することができる。国内の研究機関の図書館における利用制限の状況も大きく緩和されたため、国内でも史資料調査を効率的に進めることができる。
|