2022 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮中近世交通史の構築―交通路・交通手段・人の移動に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
22K00935
|
Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
長森 美信 天理大学, 国際学部, 教授 (50412135)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 朝鮮 / 歴史地理 / 交通史 / 降倭 / 士族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、朝鮮中近世交通史の構築を目的として次の三つの作業を進める。 ①朝鮮中近世(15~19世紀)の地理書および古地図にあらわれる地名を収集してデータベースを作成するとともに現地比定を行い、朝鮮中近世の交通路を地図上に復元する。②交通手段である船・橋梁・車・輿・牛馬の利用実態について考察する。文字資料に加えて、絵画や写真等の画像資料を収集し、データベースを作成するとともに、事例研究を通して、それらの用いられ方を明らかにする。③朝鮮中近世における人の移動の様相について、史料的条件に恵まれた王・王室・士族(両班)層の移動事例に対する研究を通して明らかにする。 本年度は、このうち①の基礎作業として、前近代朝鮮の地誌および地図等、朝鮮歴史地理関連資料の調査を行った。韓国及び日本国内で刊行された資料およびインターネット上に公開されている資料を主たる対象として地名収集の作業を進めた。 また③に関連して、主として慶尚道地域における降倭、すなわち壬辰戦争(文禄・慶長役)の際に朝鮮に投降した日本将兵の定住について研究を進め、その成果の一部を2022年度民衆史研究会シンポジウムにおいて発表した。壬辰戦争後、「降倭将」とその子孫のなかに在地士族として特定の地域に定着、定住する者たちがいた一方、大部分の降倭とその子孫たちは邑(府牧郡県等の行政区)を越えた移動をくり返しながら朝鮮の民衆として定住していった可能性を指摘した。本発表の内容は一部修正の上、論文として公表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的である文献資料の収集および調査が概ね順調に進展した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、文献資料の収集および調査を進めるとともに、韓国での資料調査・現地調査を実施する。また、その成果を学会発表、論文等によって公表する。
|
Causes of Carryover |
当初本年度に実施予定であった国内資料調査が、COVID-19の影響を含む諸般の事情によって実施できなかった。予定していた資料調査は、COVID-19が5類感染症に移行する次年度5月以降に延期して実施する予定である。
|