2022 Fiscal Year Research-status Report
Racial Relations in Relief Camps of the Mississippi flood of 1927
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22K00951
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
伊澤 正興 近畿大学, 経済学部, 准教授 (40611942)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミシシッピ川大洪水 / NAACP / 黒人諮問委員会 / 人種差別 / 堤防万能主義 / 連邦司法省 / 強制労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
1927年ミシシッピ大洪水の被災地における避難所の状況をNAACPと連邦政府の調査報告を比較分析し大規模災害を機とする人種問題の構造的要因を考察してきた。避難所での人種問題は被災地全域でみられたというよりも、災害に対するミシシッピ・デルタ特有の堤防万能主義や人種構成によって生じた。NAACPは有力新聞と世論を味方につけ、被災地のミシシッピ・デルタの人種差別撤廃を全米に訴えた。一方、連邦司法省は差別や人種融和の観点ではなく、違法な強制労働(本人の意に反した労働)の存在を捜査した。 被災地の人種問題が争点化されたのは、被災地の特殊な事情と関係していた。ミシシッピ・デルタでは堤防万能主義のもと、危険な復旧作業に黒人被災者を動員した。堤防万能主義とは、堤防さえ築けば災害問題を解決できるとする楽観的な考え方で、ジェンダーや宗教、人種差別を含む概念である。このため、堤防の復旧こそが社会の結束と災害復興という信念のもと、女性や子供は安全な避難所に移送したあと、働ける男性を堤防復旧作業に強制的に参加させた。都市部の黒人活動家にとって、自然災害との闘いを掻き立てようとする深南部の気質は人種差別的な行為に他ならなかったまた、被災者の大多数が黒人であったことも人種問題の原因となった。黒人被災者は一部の白人州兵に厳格な規則を遵守するように要求され不満を募らせた。一方、白人州兵もまた救助活動に尽力しているにもかかわらず、非協力的な態度をとる黒人被災者に対して反感を抱いた。その結果、避難所内の諍いや突発的な事故が人種問題化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1927年ミシシッピ川大洪水の避難所と人種問題について、連邦司法省およびNAACP文書を収集、分析した結果、避難所の問題は外在的には人種差別撤廃運動、内在的にはミシシッピ・デルタ特有の社会構造と関係していた点を解明した。この点は査読論文に投稿し、すでに掲載済みとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの史料分析によって、すべての避難所が差別と抑圧にあったわけではなく、実際には様々な待遇の避難所が混在していたと結論を得ることができた。その背景としておそらく、居住設備、食糧供給、娯楽施設、収用人数を反映して、避難所の待遇には格差が存在したはずである。そこで、2年目の研究はミシシッピ州グリービルの避難所とルイジアナ州ニューオーリンズの避難所の実態を比較検討することで、状況の違いを明らかにする。とくにニューオーリンズ避難所の評判はミシシッピ州と比べて良好であった。地域比較の視点を取り入れることによって、避難所の待遇格差とその要因を特定する。これまでの研究活動において。史料の一部が収集済みとなっている。27年大洪水に関連する収集済み史料は以下の通りである。 ① Percy Family Papers (Mississippi Department of History and Archives)ミシシッピ・デルタの大プランターの書簡② Peonage File of Department of Justice(National Archives)連邦司法省の避難所調査③ Department of Labor( National Archives)1920年代の黒人大移動に関する多彩な史料④ Chicago Defender (Pro Quest版ウェブ史料)黒人新聞記事⑤ Jackson Daily News (Mississippi Department of History and Archives)ミシシッピ州地元新聞⑥ Daily Clarion Ledger(Mississippi Department of History and Archives)ミシシッピ州地方新聞。
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Causes of Carryover |
初年度はパソコンを購入したため、予算的に厳しくなり、海外調査を断念した。未使用の研究費については、コロナ収束以降を見据えて、史料調査および収集費用に割り当てた。本年度は現在の渡航費用の状況を鑑みつつ、できる限り海外での資料調査期間を設定したい。収集する史料は1927年ミシシッピ川大洪水時のニューオーリンズ避難所の状況と実態に関するものである。現在、ミシシッピ州の避難所の実態を解明したいるため、災害の地域比較を取り入れた研究が期待できる。
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Research Products
(2 results)