2022 Fiscal Year Research-status Report
啓蒙改革期ハプスブルク君主国における王権と諸身分 1749-1763
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22K00966
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
岩崎 周一 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (60452041)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハプスブルク君主国 / 複合君主政 / 諸身分 / 近世ヨーロッパ / 議会 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年2月16日から3月8日までオーストリア共和国に赴き、ウィーンのオーストリア国立文書館および国立図書館、そしてザンクト・ペルテンの下オーストリア州立文書館にて、以下の諸史料の調査を、1749年から1756年までの分を中心としておこなった。 この調査により、この調査期間においてハプスブルク王権は、従来は諸身分が選んだ三名の候補者から選任することになっていた諸身分の長たる領邦長官の任命を、諸身分の了解あるいは事前協議を経ることなく、独断で決定したことが明らかとなった。また、領邦議会の開会は従来君主自らが臨席して実施されることになっていたが、1750年以降はこれが謁見の中で済まされるよう簡略化されて実施されるようになったことも明らかとなった。 以上に略述したように、ハプスブルク王権がオーストリア継承戦争の終了後、従来手を付けずにいた諸身分の伝統・慣習・特権に対する攻勢を強め、それらを自らの有利になるよう改変する様々なアプローチをおこなっていたことが明らかとなった。これは、この時期に王権が諸身分を圧伏する形で国政運営をおこなおうとしていた事情と一致する。ただ一方、これらの決定の理由については、諸身分の代表団に対し君主自ら詳細に説明をおこなっており、一方的な権利の侵害とならないよう、一定の配慮が取られていた点は注目される。 以上の研究成果は、2023年度中に創元社より刊行予定の『マリア・テレジアとハプスブルク帝国(仮)』にも反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍がなお収まらない状況ではあるが、オーストリアに研究出張に赴くことができ、検討を予定していた史料の調査を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍をめぐる状況はなお予断を許さないが、今後も研究の軸となるオーストリアへの研究出張を継続し、未公刊史料の検討に基づく調査を進展させていく。
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Causes of Carryover |
物価高及び円安により、当初計画では海外出張に赴くことが厳しく、計画見直しを行った結果、次年度使用が生じたため。次年度はオーストリアへの研究出張等に使用する。
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