2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00977
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
戸根 比呂子 金沢学院大学, 文学部, 講師 (10846710)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 玉つくり遺跡 / 碧玉原石産地 / 玉類 / 弥生時代 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、弥生・古墳時代の日本列島における玉類(管玉や腕輪形石製品など)について、素材となる碧玉原石産地の考古学的研究を行う。特に、近年、存在が明らかとなった滝ヶ原碧玉原石産地遺跡(石川県小松市)について詳細な踏査を進め、北陸の玉作の特質を明らかにする。さらに、碧玉原石産地と玉作遺跡(玉類の生産遺跡)の石材を比較検討することで、両者を結びつけて人や素材の動きを捉える。石材は、科学的・考古学的・岩石学的手法による観察・分類を行い、結果を相互に比較することで、確実な分類を行う。併せて、石材選択や技術変化等の背景追求の一助として、東北アジアにおける玉作技術や玉作工具も含めた比較文化論的研究を進めていく。 令和5年度は、①研究協力者とともに調査や打合せを行ったほか、②他地域における石材採集・流通に関する現地調査、③玉作遺跡の出土資料調査について、研究を進めることができた。 ①滝ヶ原碧玉原石産地遺跡の現地踏査(令和4~5年度にかけて計4回)、研究協力者との打合せ(1回):踏査では既往成果の現地での再確認、特徴的な石材のサンプル採取・採取現場の記録を行った。打合せではこれらの調査成果の確認、資料調査対象遺跡のピックアップ、今後の調査方針の確認(詳細調査地点の選定、土地所有者への連絡、他地域の碧玉原石産地の見学等)等を行った。 ②他地域における現地調査(1回):九州地方において、九州一帯に流通した「阿蘇溶結凝灰岩」、弥生時代の北部九州~山口県の遺跡で顕著に確認される「今山産玄武岩」「笠置山産輝緑凝灰岩」について、石材原産地や遺物の資料調査を行った。 ③玉作遺跡の出土資料調査(2回):加賀市片山津玉造遺跡出土品の見学を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画どおり、研究協力者とともに打合せを重ねて研究方針を確認しつつ、現地踏査や資料調査を進めることができた。また、詳細調査の地点選定など、次年度の研究につながる具体的な方針も決めることができた。 一方、当初予定していたロシア沿海州での調査は、国際情勢も鑑みて実施保留としているが、これに替わる調査として、他地域における石材採集・流通に関する調査を計画し、一部は実施することができている。 こうした状況を総合的に鑑み、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
滝ヶ原碧玉原石産地遺跡におけるこれまでの現地踏査の成果を踏まえ、石材を採取していた可能性のある重要地点については、詳細調査により遺跡の現状把握をさらに進めていく。また、玉作遺跡の出土資料調査として、特に関連の深い加賀・小松市域や福井県内での調査を継続し、原石産地遺跡の石材との比較検討を進めていきたい。 なお、令和5年度はロシア沿海地方など東アジアの玉作遺跡の資料調査も予定していたが、現在の国際情勢からは調査が難しい状況が続いている。計画の先送りも視野に入れつつ、上記のとおり踏査成果が得られた滝ヶ原碧玉原石産地の詳細調査や、国内他地域での石材採集状況の現地調査も計画しており、現在の踏査成果を踏まえた発展的調査への計画変更なども視野に入れて、研究を遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
石材分析のための実体顕微鏡、比重測定装置、一眼レフカメラの接写レンズ購入などを予定していたが、これまでの調査では屋外での現地踏査を重視したため、屋内での石材分析や分類は未着手である。研究の進展に合わせて、資料に合った機材を適宜、購入していきたい。 また、現地測量用のオルソ写真作成ソフトの購入を予定していたが、令和5年度までの調査で、ようやく詳細調査地点が定まりつつある。今後、詳細調査地点の条件や縮尺に合ったものを、厳選して購入していきたい。
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