2022 Fiscal Year Research-status Report
完新世におけるミクロネシアの人類拡散の考古学的再検証-貝製品を中心に-
Project/Area Number |
22K00988
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山極 海嗣 琉球大学, 島嶼地域科学研究所, 講師 (80781202)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 考古学 / 完新世 / 人類拡散 / ミクロネシア / フィリピン / 貝製品 / 遺物組成 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、太平洋における完新世人類の拡散過程を復元することを最終的な目標としている。このうち本研究課題では、先行研究で想定されている紀元前1500年頃のフィリピンからマリアナ諸島への人類移動説について、貝製品を中心とした考古資料の比較を実施することで従来の説に対する再検証を行なうことが目的である。また、ミクロネシアを中心にメラネシア、東南アジア島嶼部の物質文化の内容を再整理することで、ミクロネシア初期人類の拡散過程の考察に繋げる。 1年目となる今年度は研究課題の実施に先立って、研究分担者である山極海嗣(沖縄・台湾・フィリピン考古学)、研究協力者である片岡修(ミクロネシア考古学)、田中和彦(フィリピン考古学)と共に、研究代表者(沖縄・ミクロネシア考古学)主催の研究会を熊本大学において実施した。研究会では各地域における研究の現状や考古学的な課題を共有し、今後の研究の方向性についても検討した。 当該年度の具体的な作業として、ミクロネシアとフィリピンを主とし、関連地域も含めた貝製品の集成作業を実施し、一覧表の作成などを現在進めている。また、現在研究代表者が借用または保管している研究対象地域から出土した貝製品(グアム島ハプト遺跡、ポンペイ島ナンマトル遺跡タウ、レンゲル島A2-27遺跡など)の整理作業に着手している。具体的には、クリーニングやナンバリング、写真撮影や表作成、遺物実測などを行なった。加えて、マリアナ諸島サイパン島やグアム島など、次年度以降に現地あるいは資料保管機関にて実施予定である資料調査について、研究者や保管機関との調整を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は3年計画となっており、1年目は集成作業、1、2年目に現地での資料調査、3年目以降に分析、考察を実施する予定であった。当該年度には対象地域の貝製品について集成作業を実施しているが、その量が膨大な上に入手困難な文献資料も多く、充分な整理と集約ができていない状態にある。また、当初予定していたマリアナ諸島のサイパン島における資料調査について、保管機関である北マリアナ諸島歴史文化博物館との連絡が取れなくなっている。この点についてはマリアナ諸島の考古学者であるJudith R. AmesburyやScott Russellと連絡を取り、再調整に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の根幹をなすミクロネシア及びフィリピンの資料集成作業が遅れているため、人を雇用するなどし、集成作業のスピードを速める必要がある。また、手元で保管されている資料の整理作業についても人員を増加し、質を担保しながら早急に実施する必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度は対象地域の資料集成作業と資料整理作業の実施が中心であり、また、研究代表者の日常業務量が多く、当初予定していた国内出張を実施することができなかった。そのため次年度に資料調査を目的とした国内外の出張旅費の執行を予定している。また、当初購入予定であった写真撮影の機材については、目的とする照明器具の販売が停止していたことに加え、現在所持している三脚の部品購入によって賄うことができた。また、作図用のAdobe社のIllustratorなどのソフトについては別予算で購入することができた。これらの余剰分は今後必要となる人件費や、申請時よりも減額となった国内外の出張旅費の補填とする予定である。
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