2022 Fiscal Year Research-status Report
食料の安定供給に資する出荷時期の棲み分けと産地間調整に関する研究
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22K01033
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
栗林 賢 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 准教授 (90732991)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リンゴ / 主産地 / 流通 / 産地間調整 / 果樹 / 市場価格 / 新品種 / 市場外流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンゴの主産県である青森県、長野県、山形県において生産・流通に携わる県庁担当者、各JA、その他関係機関への聞き取り調査を行い、生産・流通の概況について把握に努めた。まず青森県においては生産者の高齢化などに伴う有袋ふじの生産減と4月以降の有袋ふじの販売量減のあおりを受け、流通の多くを担うJAではこれまで4月以降の販売が少なかった無袋ふじの販売を長期化させることで市場価格を維持していることがわかった。また、長野県では従来の早生種よりも早い段階で色づき、8月中旬頃に出荷可能なシナノリップの導入が進行していた。これにより、青森県との出荷時期の差異化を図ろうとしていた。しかし一方でブドウの市場価格が好調であることもあり、リンゴからブドウへの切り替えも進行している。山形県でのリンゴ生産・流通は近年、大きな変化をしていていないことがわかった。山形県では積雪寒冷地ということもあり、リンゴは基本的に丸場台が採用されている。そのため他品種などへの改植・更新も積極的には行われていない。他県では早生種と晩生種の端境期を埋めるように中生種の導入が図られているが、山形県では中生種の収穫時期に収穫可能かつ比較的手間の少ないラ・フランスが普及していることもリンゴの生産を硬直化させることにも繋がっている。また流通面においても山形県では贈答用リンゴの需要が高く青森県、長野県とはやや異なる様相を呈していた。以上のように三県ともに独自の問題に対処しつつ他県との出荷時期、市場価格を意識した対応が取られていることがわかった。ただ山形県においては市場外流通の占める地位が高いこともあり、その点についてはどのような歴史的背景のもとに形成されたのかを把握する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた各県における聞き取り調査を終えることができたため順調に調査は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査では主にリンゴの生産・流通の概況把握に努めた。その結果としてそれぞれの県で抱える問題点などを明らかにすることができた。今後はその問題点を解決するために各県に立地する主体がどのように活動しているのかを個別事例によって明らかにしていく。また随時学会での発表、論文の執筆なども進めていく。
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Causes of Carryover |
年度末の3月30日まで青森県で調査を行ったこともあり、多少余裕を見て旅費を計算していたため。次年度使用額については旅費の補填に当てる予定である。
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