2022 Fiscal Year Research-status Report
高解像度空中写真を用いた津波石と暴浪巨礫の識別による津波履歴と震源モデルの精緻化
Project/Area Number |
22K01036
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
前杢 英明 法政大学, 文学部, 教授 (50222287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宍倉 正展 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (00357188)
行谷 佑一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90466235)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 津波 / 巨礫 / 台風 / 琉球海溝 / 三次元点群解析ソフト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、沈み込み型プレート境界に位置する日本列島太平洋側、とりわけ琉球海溝に面する南西諸島沿岸に分布するいわゆる津波石とよばれる巨礫群を、高解像度空中写真やドローン空撮画像を多年次にわたって比較分析することにより、津波石と台風などの暴浪で移動した巨礫(暴浪巨礫)を識別することを目的としている。識別された津波石のみのデータから当該地域に来襲した津波履歴や震源モデルを検討し、それらの精緻化を試みる。さらに地震や津波の長期発生予測による地域の防災・減災に寄与すれば、地理学が防災分野において社会貢献できることを広く伝えることができる。本研究の中心的フィールドとなる南西諸島でも大地震や大津波が過去に発生していることが指摘されている。しかし残されている歴史史料の数が日本本土に比べ圧倒的に少ないため、その発生規模や時期、または間隔に関する情報がきわめて少なく、海溝型大地震の危険性にさらされているにもかかわらず、調査研究が遅れている。具体的な研究方法は以下の通りである。日本において20世紀半ばから蓄積がある複数年次に撮影された高解像度空中写真データ、および最新のデータとしてドローンによる空撮を行い、それらをオルソ画像化して同じ座標系の上で重ね合わせる。画像解析から実際に大津波が発生していない期間に運搬された巨礫を抽出し、逆に動いていない巨礫は津波でしか運搬しえない巨礫として識別される。津波石の分布や諸元を明らかにし、津波石に付着するサンゴ試料の放射性炭素年代測定やウラン-トリウム年代測定を行うことによって、津波発生履歴や震源モデルを精緻化できる。2023年度は、リーフ内に巨礫が集中的に分布している石垣島宮良湾、石垣島伊原間、宮古島東平安名﨑、多良間島について現地調査を行い必要な情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、沈み込み型プレート境界に位置する日本列島太平洋側、とりわけ琉球海溝に面する南西諸島沿岸に分布するいわゆる津波石とよばれる巨礫群を、高解像度空中写真やドローン空撮画像を多年次にわたって比較分析することにより、津波石と台風などの暴浪で移動した巨礫(暴浪巨礫)を識別することを目的としている。2023年度はその中で、リーフ内に巨礫が集中的に分布している石垣島宮良湾、石垣島伊原間、宮古島東平安名﨑、多良間島について現地調査を行い、巨礫の分布状況の確認を行った。さらに各地区で撮影された国土地理院発行新旧空中写真(400dpi解像度、1963年以降で5年次分程度)を収集し、それらを同一座標系の上で礫の移動状況を確認するため、陸上のGCP(グランドコントロールポイント)として、現地において各地区10点程度のVRS座標測量を行った。これらのデータを元に、3次元点群解析ソフトウェア(MetaShapePro)を利用して、各地区の1963年以降の巨礫の移動状況を確認中である。これらの地区の中でおおよその巨礫の移動が確認された地区においては、より高解像度の空中写真データを購入し、移動距離や礫の大きさなどさらに詳細なデータを、3次元点群解析ソフトウェアを活用した解析により収集していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はリーフ内に巨礫が集中的に分布している石垣島宮良湾、石垣島伊原間、宮古島東平安名﨑、多良間島について現地調査を行い、巨礫の分布状況の確認を行った。さらに各地区で撮影された国土地理院発行新旧空中写真(400dpi解像度、1963年以降で5年次分程度)を収集し、それらを同一座標系の上で礫の移動状況を確認するため、陸上のGCP(グランドコントロールポイント)として、現地において各地区10点程度のVRS座標測量を行った。これらのデータを元に、3次元点群解析ソフトウェア(MetaShapePro)を利用して、各地区の1963年以降の巨礫の移動状況を確認中である。これらの地区の中でおおよその巨礫の移動が確認された地区においては、より高解像度(1200dpi)の空中写真データを購入し、移動距離や礫の大きさなどさらに詳細なデータを、3次元点群解析ソフトウェアを活用した解析により収集していく。最近の空中写真撮影がない地域では、ドローンを活用し、最新の巨礫分布情報を直接取得する。礫の移動が観測された年次と年次の間に発生した台風などの低気圧に関する情報を気象庁から収集し、どれくらいの風速でどれくらいの波浪が発生し、どれくらいの大きさの礫ならば移動させることができるのかについて検討する。さらに、調査地域を奄美大島、沖永良部島、喜界島などに広げていき、琉球海溝沿いの津波と巨礫移動についてその傾向を分析していく。
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Causes of Carryover |
本年度購入予定だった高解像度空中写真を次年度に購入することとなったため、その予算分が次年度に繰り越された。また、ドローン撮影調査など調査も新型コロナの影響もあり、十分に行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)