2022 Fiscal Year Research-status Report
反グローバル運動下における共同体運動と農村エコロジーに関する研究
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22K01042
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
市川 康夫 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (60728244)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アンダーグラウンド・プレス / ヒッピー / コミューン運動 / カウンターカルチャー / フランス / 農村コミューン / 理想郷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、1970年代のイギリス、フランス、ベルギー、アメリカのアンダーグラウンド・プレスの収集と分析を主な作業とした。アンダーグラウンド・プレスの分析に当たっては、フランスで最も著名なアンダーグラウンド・プレスである『Actuel』のフランソワ・ビゾによる1970年代の第2版を使用した。各号には投稿欄にあらゆるアンダーグラウンド文化の情報交流が記載されており、そのカテゴリにある「コミューン(communaute)」から全ての投稿を邦訳し、分析データとした。分析ができている全体の傾向については次の通りである。まず、 まず、Actuelの投稿の属性や内容などから全体の傾向をみてみると、年別の投稿数は、1973年から1974年がコミューン運動への関心のピークとなっている。月別では、主に5月から7月にかけて投稿数が増えており、夏のバカンスシーズンの滞在先や体験先としてコミューンが関心を集めている。反対に、10月から1月頃の冬季は、農山村のコミューンでは寒さや雪など気候条件の厳しさや、食料の確保困難化などの影響で投稿が減ると考えられる。 コミューンの種類から投稿を整理すると 、全体のうち農村コミューンが314(36.6%)、都市コミューンが85(9.9%)、工芸品や手仕事を行うアルティザンコミューン が120(14%)、農業コミューンが81(9.4%)であり、農村コミューンの卓越に次いで、アルティザン活動の多さが目立つ。投稿者の性別では、全体の72.3%が男性(584人)、女性は27.7%(224人)であり、伝統社会的な男女の役割分担や垣根を無くすことが目的の一つに意識されるコミューンにおいても、依然として男性が前面に出てくる傾向がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集と分析が概ね当初の予想通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在執筆している論文は、1960年代末から1970年代に先進諸国で広く展開したコミューン運動について、フランスを事例に「アンダーグラウンド・プレス」(政府の公認を得ていない地下出版物)における投稿欄の通年的な分析を通じ、コミューン運動の全体像の把握とヒッピー が模索した理想郷の具体的イメージを明らかにしようとするものである。この論文は、埼玉大学教養学部紀要に投稿予定である。 上記論文が完成したのちは、1970年代のコミューンの実際の生活を具体的に知るために、アンダーグラウンド・プレスでありコミューン専門誌でもある『C』を中心に、ベルギーとフランスのコミューン誌である『gazette de communaute』を使用し、コミューンに関わる具体的な記述を全て抜き出し、実際にどのような生業を行い、どのようなメンバーが何人いて、どのような暮らしをしていたのかをデータベースにすることを当面の作業とする。
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Causes of Carryover |
科研費の効率的な使用を考え、翌年度分との合算により使うこととした。
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Research Products
(2 results)