2022 Fiscal Year Research-status Report
The evaluation of policy for retail areas during the Post-Corona era in UK and France
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22K01043
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
根田 克彦 奈良教育大学, 社会科教育講座, 教授 (50192258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 里美 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (00446030)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス / 飲食店 / ロックダウン / 観光政策 / イギリス / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究総括とイギリスの調査を担当する根田克彦は,イギリス政府の飲食店に対するコロナ対策に関する文献と資料を収集した。イギリスでは,ロックダウンで多くの飲食店が閉鎖や営業時間の短縮を強制され,大きな経済的打撃を受けた。飲食店のための支援策として,都市計画規制が一時的に緩和されて,路上での営業やデリバリー,異業種間の土地利用の転換が容易になった。その一時的規制緩和を,イギリスはコロナ終息後も継続した。実は,イギリスは2010年代以降に,タウンセンターにおける事業の展開を容易にするため都市計画規制を緩和する方針を示していたが,それに対する抵抗が強かった。それを,新型コロナウイルス規制を契機として実現したのである。その過程を,根田克彦(2022):イギリスの飲食店に対する新型コロナウイルス対策とそのタウンセンター政策への影響.E-Journal GEO,17,319-337,として発表した。 研究分担者である大和里美は,ロンドンとパリを調査した。ロンドンの観光地では、日本人のマスク装着率は目立って高く、他にも人種によってマスクへの考え方やCOVID-19に対する意識の違いが見られた。パリでは、空き店舗など街の状況や飲食店・観光施設の対応などを観察するとともに、フランス人3名にパリの街の変化とCOVID-19によって観光の目的地選択について変化があったかについて聞き取り調査を行った。シャンゼリゼ通りの歩行者天国も2年ぶりに復活し、チュイルリー庭園ではクリスマス・マーケットも開催されていた。COVID-19によって多くの飲食店が閉店したとのことであったが、特に2回目の訪問時には、PCR検査などの規制もなく1回目と比較して閉店している飲食店も少なくなっているようであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
航空運賃の高騰ため,昨年度,根田は渡英せず,次年度に渡航費を繰り越して,まとめて用いることとした。 それでも,資料を収集することで,イギリスの新型コロナウイルス対策と,そのタウンセンターに対する影響の報告書や論文を収集できた。その結果,イギリスの新型コロナウィルス対策の全体像を把握することができた。また,新型コロナウイルス対策のために実施された,タウンセンターにおける土地利用の変更を容易にするなどの都市計画の規制緩和が,ポストコロナ期にも継続し,都市計画の規制緩和が定着したことが分かった。その成果は,根田(2022)として刊行した。 大和は,在外研究で2021年9月から2022年9月までイギリスに在住した。そのため,旅費を用いることはなく,イギリスとフランスの調査を行うことができため,昨年度の分担科研費を本年度に持ち越した。 大和は,イギリスのロンドンとフランスのパリの観光地を調査した。ロンドンでは,2021年の後半から,日本人を除くとマスクを着用している人はほとんどおらず,観光地やパブの賑わいは以前の状況に戻ったようであった。フランスの調査は,2021年末と2022年6月に行った。2021年末に入国する際には,その直前にオミクロン株が拡大したことにより,PCR検査が必要となったが,クリスマス関連の観光行事も復活していた。2022年6月にはPCR検査の必要もなくなり、2021年末に比べて飲食店の閉店も少ない状況であった。これらの調査により,イギリスとフランスの観光地における新型コロナからの回復を実感できた。
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Strategy for Future Research Activity |
根田は,本年度,イギリスと日本で,下記の調査を行う予定である。 イギリスでは,新型コロナウイルス対策を契機として実施された,都市計画の規制緩和の影響を,地方中都市であるノッティンガム市を事例として調査する。調査は,2024年9月に行う。タウンセンター規制の緩和では,土地利用の変更,テイクアウトの開業,およびテナントの賃貸料の滞納の可能性が生じた際に,土地所有者との調停を要請することが可能になった。ノッティンガム市では,タウンセンターを,シティセンター,タウンセンター,ディストリクトセンター,およびローカルセンターの4階層に区分している。調査では,それぞれのセンターの配置と,土地利用調査と商店主に対して聞き取り調査を行う。各センターにおいて2017年に行った土地利用と2024年のものとを比較する。それにより,イギリスの都市計画の規制緩和によるタウンセンターの変化を解明する。また,比較対象として,9月にフランスの地方都市の調査を行う予定である。 さらに,根田は,イギリスの地方都市と比較するために,日本における地方の観光都市の中心市街地と周辺商業地を調査する。北海道釧路市か,函館市である。その調査は,2025年2月から3月にかけて行う予定である。 大和は,本年度,9月にフランスと,比較対象としてイギリスの観光地を調査する。対象地域は、パリと南仏の観光都市を候補とし、フランスの観光地における観光政策と土地利用に関する調査及び商店主に対する影響を聞き取りによりCOVID-19による影響を明らかにする。さらに,大和は,日本の農村部の観光地におけるCOVID-19の地域と観光政策への影響について調査する。現在対象地域として沖縄県の竹富島を予定している。調査は,6月から3月までに行う。
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Causes of Carryover |
本科研を遂行するにあたり,最大の問題は,新型コロナウイルスとウクライナ危機の影響による,航空運賃の高騰であった。そのため,昨年度,本科研の旅費を使用せず,次年度に渡航費を繰り越して,まとめて用いることとした。 大和は,在外研究で2021年9月から2022年9月までイギリスに在住した。そのため,旅費を用いることはなく,イギリスとフランスの調査を行うことができため,昨年度の分担科研費を本年度に持ち越した。 それにより,次年度に,イギリスとフランス,および日本での調査旅費を獲得することができる。
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