2023 Fiscal Year Research-status Report
The Development and Reorganization of Economic Areas by the Expansion of the two Types of Commercial Guild Systems in the Last Times of Qing Dynasty and the Era of Republic of China.
Project/Area Number |
22K01053
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
藤田 佳久 愛知大学, 愛知大学東亜同文書院大学記念センター, 名誉教授 (70068823)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 清国末期 / 民国期 / 商業組織 / 会館 / 公所 / ギルド / 荒尾精 / 東亜同文書院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は清末・民国期における伝統的商業組織の「会館」、「公所」の特性を把握することにより、同時期の中国における商業的な地域システムを解明し、戦後の共産党政権下で分解させられたとはいえ、今日の中国における商業、流域の地域システムの根底に息づき、中国の経済地域の形成、発展になお多大な影響を与えているのではないかという点にまで論考したく構想している。 この中国における商業組織の核となった「会館」、「公所」は古い歴史をもつとされるが、日本や西欧の研究者にとっては清末に認知されたにすぎず、とくにその契機となったのが、清末に日清貿易研究所の開設とそれを発展させて東亜同文書院の設立を図った荒尾精による3年半の中国での商業、貿易調査の中で気付き、浮上した存在であった。それは荒尾の『清国通商綜覧』の中で日本人に紹介されると、東亜同文書院生の現地調査で次々と明らかになった。それから刺激を受けた書院の研究者も上海や若干のフィールドで「会館」「公所」の来歴、構成、組織、機能を実証研究するようになり、大谷孝太郎や馬場鍬太郎らがより詳細な個別調査を行い、この組織をギルドとみなした根岸佶が戦後この研究で学士院賞を得たりした。 ところで、書院生たちによる調査報告書をベースにまとめられ刊行された『支那経済全書』全12巻中の1巻にまとめられた。そしてその全体像がわかるようになると、さらに書院生たちの省別踏査によってまとめられた『支那省別全誌』全18巻の中で各省の実況も明らかになってきた。 2年目は「会館」、「公所」の認識に正面から挑んだ書院系研究者の研究動向と、書院生による省別全誌のデータから「会館」「公所」の省別タイプの抽出を行い、それにより商業核として求心的な都市、省と、逆にそれら求心核へ吸収される都市、省を明らかにし、当時の商業活動の伝統的な地域ネットワークの一端を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は、書院生たちの現地調査による各省別の「会館」「公所」のデータをふまえ、それらの都市別商品の需要地と供給地をベースに、中心都市間のネットワークとそのネットの強弱から、商業行動の地域連関を浮かび上らせた点は一つの大きな成果であった。それにより、それまで都市毎の個別性のみの状況が地域間のネットとして理解できるようになったため、なぜそのような地域ネット化が生じたかを解明する切り口を得たことは、今後の研究を前進させるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2年目で得た省別、中心都市間の地域間ネットワークのタイプ別にその連関の内容とそれを支える条件を明らかにする。 2.タイプ別中心都市における「会館」「公所」配置状況を都市図から明らかにし、その配置が支える都市の商業力を明らかにする。 3.以上をふまえ、清末、民国期における中国全体の商業ネットワーク図を作成する。 4.民国期にすすめられることになった「商会」設置などの商業政策と以上の伝統的商業ネットワークとの関係を予察する。
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Causes of Carryover |
昨年度は調査始めに神戸の華僑・華人調査からスタートし、猛暑の中で坂道を歩き回った結果、初めて高血圧と診断され、投薬の不一致もあって、秋口まで自重気味に過したため、予定した神戸およびその他の各地の調査を次年度へ回さざるを得なくなったため。本年はそれらの課題を充足しつつ研究をすすめたい。
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