2022 Fiscal Year Research-status Report
産業地域における経路発展メカニズムの分析:進化経済地理学からのアプローチ
Project/Area Number |
22K01062
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
外枦保 大介 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70581669)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 進化経済地理学 / 経路発展 / 産業地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
進化経済地理学は、関連的多様性や地域レジリエンスという「一般ダーウィニズムアプローチ」と、地域の成長経路やロックインに関する「経路依存性アプローチ」に大別できる。このうち後者に関連する「経路発展」の議論が、2010年代中盤以降に欧米で盛んであり、この新たな概念や分析手法を用いた研究に着手したい。この「経路発展」とは、経路形成、経路輸入、経路多様化、経路拡張、経路のアップグレードを総称するものである。 本研究では、進化経済地理学の議論を踏まえて、経路発展メカニズムの分析をすることにより、日本および海外の産業地域の国際間比較を行いながら、産業地域の進化過程モデルを構築することを目的に実施する。 本研究では、第1に、方法論的枠組構築のために、進化経済地理学の理論的成果とその課題の解明を目指す理論研究を行う。第2に、産業地域の経路発展に関わるフィールドワーク調査を行う。 2022年度は、文献精読・海外でのフィールド調査を精力的に進めるとともに、学会発表を行った。学会発表では、縮退都市研究を手掛かりとして、事例地域スペインバスク州ビルバオにおいて、縮退都市や古くからの工業地域の困難性をどのように克服しつつあるか、政策の関連性を踏まえて考察した。産業構造転換を促す政策として、都市再開発とイノベーション政策に注目した。ビルバオにとって、都市再開発の意義は大きく、サービス経済化を促す基盤になるとともに、グローバルな接続による問題解決を経験したことにもつながった。この問題解決の手法はイノベーション政策にも反映され、自治意識の高いバスク州にとって政治的に大きな意味があったといえる。一方で、高度人材の偏在が、イノベーション政策の恩恵を偏在化させ、左岸・右岸の格差を拡大させる恐れがある。最後に、この事例研究を踏まえて、縮退都市や古くからの工業地域の困難性を克服する論点を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、(1)経路発展概念の可能性と課題を検討する理論研究と、(2)海外においてフィールドワーク調査を実施した。 これらの成果は、データ・論点を取りまとめた上で、次年度以降も継続的に学会発表や論文執筆を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、研究成果の発表および国内・海外でのフィールドワーク調査を精力的に行っていきたい。 また、地理学以外の学問領域の研究者との交流を図り、研究成果につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は、海外出張で使用したが、残額が発生した。 2023年度は、海外調査を精力的に進展させるため、出張旅費も執行する予定である。
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Research Products
(1 results)