2023 Fiscal Year Research-status Report
視覚資料の空間表現に関する歴史地理学的研究―英語圏地理学の理論と東洋美術の節点
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22K01069
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
長谷川 奨悟 佛教大学, 宗教文化ミュージアム, その他 (10727340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷崎 友紀 せとうち観光専門職短期大学, 観光振興学科, 講師 (60908888)
熊谷 貴史 佛教大学, 宗教文化ミュージアム, その他 (70719723)
網島 聖 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (70760130)
阿部 美香 京都府立大学, 文学部, 特別研究員(RPD) (80806860)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 視覚資料 / 空間表現 / 物質性 / 歴史地理 / 東洋美術 / 写真資料 / 地図資料 / 表現技法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の英語圏における歴史・文化地理学研究では、地図や絵図、絵画資料、写真資料といった視覚資料に対して、制作者の意図や作品の構図、色彩といった物質的要素をも重視した議論がなされるようになった。これらは西洋世界の社会的文脈、および西洋美術史の概説的内容を基礎としている点において、諸背景が異なる日本を含む東洋の事例を対象とする場合、その理論的枠組みを用いるには限界もある。本研究は、東洋における視覚資料の空間表現が備える技術的・物理的問題に関して、英語圏地理学の理論的枠組みを応用しつつも、日本の歴史地理学と東洋美術史の研究者が学際的に協力し、5つの視点(A:絵画/絵図、B:写真、C:印刷、D:美術史学の研究視点、E:博物館展示)から分析し、視覚資料の抱える社会的構築性との関わりを検討する。この作業を通じて日本の歴史地理学と美術史の研究視点や分析手法を併せ持ち、東洋の事例に対応できる理論的枠組みに関する議論を進めることを目的とするものである。 2023年度は前年度に引き続き、上記の視点に基づいて、絵画、絵図にみる空間表現やその技法(視点A)、写真に観る空間表現やその技法(視点B)、印刷をめぐる技法や空間表現(視点C)、美術史学による空間表現へのアプローチ(視点D)の各テーマに対して研究分担者がそれぞれの視点から資料調査と資料収集と分析を進めた。その成果は、幾度かの研究集会を通じて共有することを目指した。この研究成果としては、次年度に議論を展開する博物館資料に関する分析を含めて4本の学術論文や書籍等への寄稿、4本の学会発表等や依頼講演を通じた成果報告、佛教大学宗教文化ミュージアムでの展示活動への反映されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、博物館や図書館等の資料所蔵機関における閲覧制限や仕様変更など昨年度までの新型コロナウイルス感染症の社会的制限の余波が一部に残っていたものの、各研究分担者のテーマや領域に関連する展示の視察や資料収集に関する出張、現地調査等の実施、講演会等による研究成果の発信が比較的容易であり、実施件数も増加した。 このような背景から、次年度に議論を展開する博物館資料に関する分析を含めて4本の学術論文や書籍への寄稿、4本の学会発表や依頼講演を通じた成果報告、佛教大学宗教文化ミュージアムでの展示活動へ反映されたことからも概ね研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2022年度、2023年度に研究分担者が取り組んだ各テーマのまとめをおこなうとともに、(E)博物館における視覚資料に関する議論を分担者全員で担当し、視覚資料を収蔵、管理する博物館を結節点に視点Aから視点Dの知見を総合し、議論を深める。課題に関わる視覚資料を収蔵する博物館への視察を重ね、視覚資料の物質的な取り扱いに関する問題を調査し、研究会で各課題の成果を取りまとめる。 さらにその結果を英語圏の理論的研究に照らし合わせて、視覚資料の空間表現が備える技術的・物理的問題を明らかにしていく。以上の成果をまとめて国際学会での口頭発表や学術シンポジウムの開催を通じてその成果を報告し、論文として公表することを目指す。 とりわけ本年度は、2025年に上海で開催される予定のICHG(国際歴史地理学会)において報告するための、学会報告の申込に必要な準備や発表要旨の作成を進める。
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Causes of Carryover |
2023年度は、新型コロナウイルス感染症にともなう社会的制限は概ね解消されたものの、コロナ禍において実施されていた博物館等での資料閲覧の人的制限や閲覧時間の変更などが通常運用に戻されていない資料所蔵施設もあり、一部の資料調査等においてその影響があったといえる。また、本務校や社会教育施設においてコロナ禍で抑制されていた講演などのイベント等が復活し、複数の分担者で予定していた調査出張の調整が難しかったこともあり、出張費の使用が減少したと考えられる。また、学生を雇用する資料整理や調査も受入体制と適任人材の確保が難しく未だに実施できていない。 2024年度は、研究計画の遂行に際しての学術書籍の購入や資料調査、視察に係る旅費として使用する予定である。また、2025年度に開催が予定されているICHG(国際歴史地理学会)でのグループ発表を予定しており、エントリーのために提出する英文アブストラクトの作成や発表準備、一年間延長しての渡航費などに利用する予定にしている。
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Research Products
(8 results)