2022 Fiscal Year Research-status Report
現代アフリカ社会における若者の文化人類学的研究:エチオピアの地方社会を事例として
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22K01098
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
田川 玄 広島市立大学, 国際学部, 教授 (70364106)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 若者 / 人口論 / アイデンティティ / 世代と年齢 / アフリカ / エチオピア / ボラナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近年のアフリカの人口論で注目される若者を対象とし、そのアイデンティティ形成のメカニズムを多面的に解明する文化人類学的研究である。 2022年度は当初8月から9月にかけてエチオピア連邦民主共和国オロミア州ボラナ県で現地調査を予定していた。しかし、新型コロナ感染症の継続的な流行とエチオピア国内の治安情勢の悪化から、予定期間を短縮して2022年12月から2023年1月に行った。この地域は上述の問題に加えて約3年にわたる旱魃に見舞われ牧畜・農耕ともに非常に深刻な状況にあった。こうした状況については、インターネット等による予備的調査によってある程度把握していたものの、現地に実際に赴くことによってより具体的に状況を理解することができた。牧畜地域においては、家畜を喪失し国内避難民となった世帯が村落部から町に移動していた。僅かながら降雨のあった農牧地域でも農作物の収穫はなく家畜も大幅に減っていた。人びとはさらなる旱魃を恐れて急ぎ家畜を売りに出していた。治安状況では、ボラナ県に隣接する西グジ県およびグジ県の治安悪化は深刻であり、ボラナ県でバイクを使用した移動がときとして制限されることもあったという。一方でエチオピア国立ボラナ大学が開学しており、今後も開発計画が進められている。 こうしたなかで、ごくわずかながらも若者へのインタビュー調査を行うことができた。その調査では、教育だけでなく経済機会を求めた地域外への若者の移動が拡大している可能性が示された。これまですでにボラナ県でインフラ開発の労働者として日銭を稼ぐことがあったが、それがさらに県外に仕事を求める移動となっていると思われる。こうした若者の動向について、近年のボラナ県の政治経済的な状況との関係と文化的な影響について引き続き調査する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エチオピア国内の治安状況、新型コロナウィルス感染症の継続的な流行といった理由から当初、予定していた現地調査を短縮せざるをえず、十分に現地社会の状況を把握できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は引き続きエチオピア連邦民主共和国オロミア州ボラナ県において現地調査を行う。具体的には、現地の政治経済状況と学校教育の進展を調べつつ、若者の動向について当事者にインタビュー調査を行っていく。また、こうした現地調査と並行してアフリカの若者研究の文献調査を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していたエチオピア連邦民主共和国オロミア州ボラナ県での現地調査が、新型コロナウィルス感染症の継続的流行とエチオピア国内治安状況悪化のため、短縮せざるをえなくなったため。2023年度は現地調査においてさらにボラナ社会の政治経済状況を把握したうえで、若者を中心としたインタビュー調査を拡大して行う予定である。
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Research Products
(2 results)