2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K01104
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Research Institution | Hokusei Gakuen University Junior College |
Principal Investigator |
風戸 真理 北星学園大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (90452292)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 遊牧 / 移動 / 国境 / モンゴル / ロシア / コロナ / 戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、交付申請書の「9.補助事業期間中の研究実施計画」に記載のとおり、遊牧文化の現代的展開について情報化に注目しながら説明するために、国内外でのフィールドワークにより資料を収集し、論文発表や学会発表をおこなうものである。 2023年度にモンゴル国において実施したフィールドワークによる調査内容は、モンゴル系の人々が国境を越えておこなう移動の選択と、それに関わる情報収集の方法についてである。具体的には、ロシアから徴兵を拒否してモンゴル国に逃れてきた人びとから聞き取りをおこなった。また、ウランバートル市の簡易宿所の過去6年間の帳簿を入手するとともにコロナ期の経営について聞き取りをおこなった。 成果発表としては、国際学会(東アジア人類学会)にて口頭発表「Hospitality of Guesthouses in Mongolia」をおこない、議論を精緻化して論文「複合的な歓待:ゲストハウスの経験したパンデミックと戦争」として投稿した。本論では、モンゴルのホスピタリティー産業の一部をなすゲストハウスが、パンデミックや戦争という社会変化の中で、複合的な歓待を実践してきた様子を示してきた。すなわち、コロナ前には外国人観光客に宿泊とツアーを提供してきたが、2020年にはコロナに対する防疫規制のため宿泊者が激減したため、転業して部屋をモンゴル人に貸した。2022年には、隣国ロシアで戦争が始まり、ロシア人が逃げて来て滞在した。ゲストハウスの事業においては原則として商業的領域での歓待がおこなわれるが、本事例ではオーナー家族の私的領域との混ざり合いや地域社会との相互浸透が見られた。 加えて、事典の項目として「天幕」と「衣服と装飾」を『中央ユーラシア事典』に執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載のとおり、モンゴル国でのフィールドワークをおこない、これまで不明であったコロナ期の状態を調査し、その結果を国際学会で発表した後、論文にまとめて学内紀要として投稿することができた。 文献研究としては、モダニティ、ノマド、民族誌記述などに関する社会理論をテーマとしたオンライン研究会にて、研究遂行に必要な資料を集中的に検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については概ね、当初予定していた2024年の計画を進めていく予定である。 まず遊牧民のSNS利用については、現実の経済社会生活との関係、および最新のSNS利用について、直接観察と聞き取り調査をおこなう。 次にゲルの利用については、2020-2022年のコロナおよび2022-2023年の全国的な雪害の後でのゲル利用の実態を調査する。移動性、定住地と草原での比較、ゲルのメンテナンスに必要な新素材に注目する。 その他の遊牧的な文化要素についても、代表者がこれまでに調査してきた物質文化を中心に、コロナ後の変化を観察し、得られたデータは随時学会等で報告していく。
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Causes of Carryover |
国内外での調査および学会・研究会への対面参加の予定を当初立てていたものの、昨年度に参加を見合わせたものがある。また、2022年度に新型コロナウイルス感染拡大を受けて出張が難しかった時期があり、この年度に残された研究計画を少しずつ遂行している。 このため、経費のうちでもとくに旅費の支出が縮小し、未使用額が生じて次年度使用額が生じた。この分を次年度に繰り越して、本研究計画を実現するための出張経費として使用する予定である。
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