2023 Fiscal Year Research-status Report
子の出生正当化をめぐる法哲学:親子法制の哲学・倫理学的基礎理論の試論的構築
Project/Area Number |
22K01113
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大江 洋 岡山大学, 教育学研究科, 特命教授 (80308098)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 子どもの権利 / 子どもの道徳的・法的地位 / 生殖・出生の倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績の主たる点は、本研究の試論的論文を執筆したことである(2024年度内に発表予定)。「出生・生殖の正当化原理について」というタイトルの下、次のような論述を行った。まず、第1章において「なぜ出生・生殖問題なのか」という問題意識から検討を始めた。そこでは、科学・医療技術の進展を背景とした場合の出生・生殖問題が焦点化しているという現状認識から、現代的優生思想問題とも言える問題を含め、考察の必要性を提起した。さらに、人権理念の拡張という視点から、子どもの立場から考察する出生・生殖問題の重要性を指摘した。 第2章においては、出生・生殖(全面)肯定の根拠論を検討した。具体的には、(1)宗教的正当化について古来よりの論点を取り上げ、次に、(2)家族および国家・社会に向けての出生・生殖の正当化問題について検討を行った。さらに、(3)子ども自身の権利利益からの正当化として、子ども自身の立場からの検討を進めた。章の最後には、(4)生殖権・生殖の自由という観点から、産む側にとっての正当化理由を検討した。 第3章においては、出生・生殖(全面)制約・否定の根拠論を検討した。具体的には、大きく(1)同意不在による制約論と(2)帰結主義的制約・否定論(主としてベネターによる反出生主義的主張)を検討した。 第4章においては、出生・生殖正当化原理論として次のような論点を検討した。(1)おとな側の不可避的主導性 (2)益―害比較論およびリスク重視論 (3)子どもの道徳的・法的地位である。 最後にまとめして、残された課題を整理した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記、研究実績の概要で言及したように、試論的論文を作成したことにより、おおむね研究計画は進捗していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の試論的論文を骨格として、さらに詳細な論述を進め、単著化することを計画している。
|