2022 Fiscal Year Research-status Report
近世近代移行期の日本における西洋法政関連語の訳出に関する研究:蘭語史料を中心に
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22K01117
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山口 亮介 中央大学, 法学部, 准教授 (80608919)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日本法史 / 法の継受 / 法の摂取 / 蘭学 / 洋学 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度となる2022年度は、本申請研究を行うための基礎資料となる、近世中期から後期作成の『道訳法児馬』及びその改訂版等の複数の蘭日辞書、またオランダで刊行された欧州諸国の政治体制あるいは法体制に関する記述が見られるものや、民事・刑事の訴訟法をはじめとした諸法典(箕作阮甫『和蘭律書』等)などといった直接・間接に法体制や法概念にかかわる情報を含む諸テキストの調査、蒐集作業および、これらの史料の各機関における所蔵状況を整理してリスト化の作業を進めた。現時点ではこれは準備作業にとどまるものであるが、近世以来の蘭書翻訳が日本近代法の輪郭形成の前提のひとつをなすという視点については、現在までの成果を踏まえながら、法制史学会東京部会第282回例会の「日本近代法制史と時代区分論」をテーマとするワークショップにてその一部を報告したほか、現在改訂作業を進めている分担執筆の概説テキスト(出口雄一ほか編『概説 日本法制史』弘文堂)の報告者担当章に反映を行っているところである。 なお、この作業の過程では、オランダ商館員関係者によって作成が行われた日本に関する解説記事(J.F. van Overmeer Fisscher, Bijdrage tot de kennis van het Japansche rijk, 1833)の中に法・権利概念に関する幾つかのキーワードが少なからず含まれていることを確認することができた。同書は天保・弘化年間のオランダ法典翻訳事業にも関与している杉田成卿らによって訳出されていることから、今後はこのテキストの詳細や訳出のあり方についても分析をすすめていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本申請研究の基礎資料となる関連史料の把握作業を進めた。しかし、①集中的に出張を計画していた8月中に新型コロナウイルス感染症の猖獗に見舞われ、夏季の出張を断念せざるを得なかったこと、②2023年4月の所属機関のキャンパス移転作業のスケジュール確定が遅れ、年度末の移転作業に時間を要したこと等の事情から、その他の史料の網羅的把握を行うには今暫くの作業時間を要する。以上のことから、進捗状況は(3)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、上記進捗の遅れを回復すべく、津山洋学資料館等の所蔵機関への史料蒐集出張等を通じて、引き続き関連テキストの把握とリスト化を進めていきたい。また、現時点で原書と訳書の確認のできている法・権利概念にかかわるキーワードを含むテキストについては、順次訳語の対照の作業を進め、その成果を逐次史料・文献紹介および研究報告として公表していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は感染症流行の時期と出張が重なり、予定していた出張旅費を使用することができなかった。このため、その一部を次年度を先取りする形で書籍購入に使用している。次年度は、出張旅費の執行を行うとともに、書籍購入費用との調整を行って予定通りの予算執行を行っていきたい。
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