2022 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ民事手続におけるJohn Doe litigationの一考察
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22K01121
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
竹部 晴美 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (00610007)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アメリカ法 / 民事訴訟法 / John Doe Litigation / 発信者情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アメリカ合衆国におけるJohn Doe litigationについて詳しく検討を重ねるものである。アメリカ合衆国では、被告をJohn Doe(匿名)としてそのまま訴訟提起することが可能であり、例えば、インターネット上の匿名の発信者によって原告が権利侵害を受けた場合、発信者を特定し、損害賠償請求等を行うことができる。John Doe litigationは画期的ではあるものの、連邦法にその根拠がないため、その成り立ちや根拠は判例に委ねられている。本研究では、John Doe litigationの判例研究を通して、その利用場面の実態とJohn Doe litigationの価値及び問題点について整理検討を行い、その全貌を明らかにすることを目標としている。 そこで研究開始一年目の2022年度は、West Lawなど法律情報検索データベースを用いて文献検索を行い、John Doe litigationに関する書籍、学術論文を収集し、文献調査を中心に行うこと、John Doe litigationであること自体が紛争の主たる争点になっているアメリカ合衆国の判例を検索を行い、リーディングケースを発見、分析することを目標として研究実施計画に掲げていた。 2022年度は、当初の研究計画におおむね従い、John Doe litigationに関する判例に多く触れることができ、リーディングケースになるであろう重要な判例の発見とその分析をおこなった。重要判例にふれて分析するなかで、John Doe litigationに関する学術論文の収集と分析についても計画通り遂行できたように思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アメリカ合衆国で行われているJohn Doe litigationについてその全貌を明らかにするため、2022年度は、上記、研究実績概要のところでも触れたとおり、John Doe litigationに関する判例や学術論文の収集と分析を中心に行い、2023年度は、John Doe litigationについて、実務上の運営方法や運営上の問題点などマジストレイト裁判官とトライアル裁判官にインタビュー調査を行い、前年度に続いて文献調査による情報収集も継続し、最終年度である2024年度はこれまでに収集した情報の分析を行うことを本研究の研究計画としている。 2022年度については、判例や学術論文の収集を行い、多くの事例やローレビューに触れることができた、なかでもCarol M. Rice, Meet John Doe: It Is Time for Federal Civil Procedure To Recognize John Doe Parties, 57 U. Pitt. L. Rev. 883, 889 (1996)や Gleicher, NOTE: John Doe Sabpoenas: Toward a Consistent Legal Standard, 118 Yale L.J. 320, 328 (2008)に関してはその内容が本研究を遂行する上で重要であることがわかった。さらにMcIntyre v. Ohio Elections Comm'n, 514 U.S. 334 (1995)から合衆国憲法第一修正とのかかわりについて新たな視点を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について、研究計画では、2023年度は、John Doe litigationやsubpoenaについて、実務上の運営方法や問題点などマジストレイト裁判官とトライアル裁判官にインタビュー調査を行うことを調査の中心としている。さらに2024年度は、それまでの文献調査とインタビュー調査の結果を論文等にまとめて、成果の作成をすることとしていた。 しかしながら、今後は研究時期に若干の変更を伴うことになりそうである。具体的には、2023年度も次年度に引き続き、判例や論文の文献調査を中心的に行い、インタビュー調査は最終年度に行うことも検討したいと考えている。その理由はとして、まず当初は2024年度に予定していた研究成果の作成の一部を初年度にも取り組むことができ、成果を公表できたこと、次に、予想よりも文献調査に時間を要していることを挙げておく。
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