2023 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ第二帝政期におけるラーバントの法学と実践的活動に関する個人史的研究
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22K01129
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
藤川 直樹 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (00632225)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ラーバント / 公法 / 行政法 / 史料論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は令和4年度に引き続き初期ラーバントの学問業績の分析を進めるとともに、しかし主としてドイツ連邦文書館、プロイセン枢密文書館、ドレースデン中央文書館における史料収集及びそれらの分析を行った。 ①ドイツ連邦文書館(ベルリーン=リヒターフェルデ支所)では、当該館に所蔵されているラーバント関係文書の全面的な調査を実施し、全22巻に渉る全ての史料の撮影を行った。ラーバント関連文書は明らかに完全性を欠いており、伝承についても不明な点が少なくないが、伝承史料のなかに含まれるいくつかの情報から関連文書の原状概要を一定程度に推定することができた。とりわけ、本研究題目に掲げる「ラーバントの…実践的活動」の分析にとって本質的な意味をもつ法的鑑定意見書の原稿目録と推定されうる史料を取得したことは、本研究の基礎としうる史料的基盤を拡充せしめることとなった。その他、残存する個人史料から、死後出版の自叙伝の確度やその基礎となっている個人文書の保管状況など、個人史的分析に有益な情報を多く獲得することができた。 ②プロイセン枢密文書館ではアルトホフ関係文書におけるラーバントその他同時代の法学者の書簡、文部省文書におけるラーバントのベルリーン大学招聘案関係の史料、及び公務省文書におけるヘッセン・ルートヴィヒ鉄道国有化関係の史料をそれぞれ調査・検討した。ベルリーン招聘挫折の顛末が比較的詳細に明らかになったほか、私鉄の国有化問題に関する史料からは大学教授の手による法的鑑定意見書がもつインパクトが具象化された。 ③ドレースデン中央文書館ではラーバントのゲルバー宛書簡を調査・検討した。もとよりラーバントがゲルバー『ドイツ国法体系綱要』の法学的方法を継承するものであることは殆ど常識に属するが、これらの書簡が個人史的なレヴェルでその知見を裏打ちすることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度に予定した文書館での史料収集及び検討は概ね順調に実施されたが、令和4年度の実施状況報告書に記載した新たな課題の遂行を並行して行う必要があったほか、令和5年度の研究を通じて上記「研究実績の概要」に記載した史料基盤の拡充に伴い、当初予定にない史料調査が必要になったためである。また、令和5年度に予定したベルリーン州立図書館所蔵の手稿史料の閲覧が手続上の理由により令和6年度にずれ込むこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に引き続き、当初計画に従ってドイツの各文書館所蔵史料の収集・検討を進める他、ラーバントの公刊論文の検討を進める。現在発生している若干の遅延については、文書館訪問の日程調整によってカバーすることを試みることとし、場合によっては研究計画の変更(期間延長)を検討する。
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Causes of Carryover |
令和5年度に利用したドイツの各文書館において自己所有の機械による複写が認められていたことから、複写経費を生じなかった。また、現在滞在中のベルリーン及び近郊電車の乗継で日帰りの可能なドレースデンでの調査に終始したため特別の交通費・宿泊費を要しなかった。令和6年度は邦語文献の収集のため一時帰国を予定するほか、フランスおよびドイツ西部の文書館を訪問するので、主にその旅費に充当する。
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