2022 Fiscal Year Research-status Report
科学技術行政におけるガイドラインの法的位置づけとコントロール
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22K01134
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 誠 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00186959)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ガイドライン / 科学技術法 / 標準化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今期は、コロナ禍による資料収集、ヒアリング等への制約が大きかったため、科学技術にかかるガイドラインの分野横断的把握に向けての、資料収集をある程度は進めつつ、ガイドラインの法的性質および政策的含意についての、基礎的な考察に重点を置いた。この点にかかる研究実績として、以下の3つの観点から進展を見た。 第1に、国際的に、科学技術について非拘束的な「標準」が用いられ、それが「標準化」する過程についての、史学・社会学の研究をサーベイし、現代における当該「標準」の多用および標準化の進展の意義についての検討を進めた。第2に、日本において、国の行政が非拘束的な基準として「標準」を示し、地方を誘導するという手法について、史的観点から実証的に考察を加え、各種ガイドラインや勧告とも共通するその素因、および分野における偏差の重要性について、ガイドライン分析にあたっての有意な視点を得た。以上の第1第2の検討については、その一部を論文リスト1・2に掲げる論文として公表することができた。 第3に、ガイドラインについては、それが布置される法形式が、行政規則においても多層に存在する。そこで、法規命令も含めた法令文書の多層性、多様性を実務における意味も含め改めて精査する必要があるところ、再生エネルギー分野における、事業者に対する各種要請(技術的な内容も含む)の法令上の位置付けについて、政省令の本則、書式、ホームページにおける記載等を腑分けし、問題点を把握し、検討を進め、論文を執筆した。次期には公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要の冒頭に示したように、今期は、コロナ禍による資料収集、ヒアリング等への制約が大きかったため、本研究全体の基礎となる科学技術ガイドラインの資料収集は当初の予定よりも遅れている面がある。しかし、資料の制約が比較的小さい、ガイドラインの法的性質および政策的含意についての、基礎的な考察に重点を置くことにより、その成果の一部は今期公表することができたし、この面での成果は、次期にも公表を見込んでいる。これにより、上記科学技術にかかるガイドラインの分野横断的把握及び、その比較法分野への展開という、次期の研究内容に向けての、基盤を形成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次期(令和5年度)は、以下の研究を進める。 (1)今期に引き続き「科学技術にかかるガイドラインの分野横断的把握」に向け、バイオテクノロジー分野を中心に据えつつ、運輸安全、再生エネルギー等にも検討分野を広げ、資料収集と運用実態の分析を進める。 (2)(1)と並行して、ドイツ、及びEUを中心に、科学技術にかかるガイドラインの資料収集と運用実態の分析を進める。 (3)今期に引き続き、ガイドライン等、非拘束的文書の法的・政策的含意について、歴史的、基礎論的考察を深めることで、(1)~(3)あいまって、本研究の最終的な目的である、科学技術にかかるガイドラインの法的位置付けとコントロールについての理論モデルの提示に向けての分析基盤を固める。
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Causes of Carryover |
今期は、ガイドラインの法的性質および政策的含意についての、基礎的な考察に重点を置くことにより、その成果の一部は今期公表することができた。しかし、コロナ禍による資料収集、ヒアリング等への制約が大きかったため、本研究全体の基礎となる科学技術ガイドラインの資料収集等は当初の予定よりも遅れている面があり、次年度使用額が生じた。この点については、当該資料収集にあてる経費と、次年度新たに、比較法の検討の対象とするドイツ、EUを対象とした資料収集等にあてる次年度請求分とを並行して使用する計画であり、これにより、本研究の最終目的である、科学技術にかかるガイドラインの法的位置付けとコントロールについての理論モデルの提示、に向けて研究を着実に進展させることが十分に可能である。
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