2022 Fiscal Year Research-status Report
公法解釈方法の日米比較分析とそれに基く公法教育方法論の構築
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22K01138
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福永 実 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 教授 (10386526)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 制定法解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「公法解釈方法の日米比較分析とそれに基く公法教育方法論の構築」と題するものである。近年,我が国の公法学界では公法解釈の方法について一定の関心が高まりつつあるが,なおその具体的体系化には至っていない。そこで本研究はこれまで日本の法解釈学があまり比較対象としてこなかったアメリカ法を措定し,同国での公法解釈方法論の最新動向を分析することで我が国の公法解釈方法論の体系化を模索する。次に,アメリカでの公法教育方法論の状況を分析する。近年,アメリカのロースクールでは1年次で法解釈方法論と行政法初級を融合する教育が行われており,我が国の法科大学院の教育方法論が参照すべき情報は多いが,この点はアメリカにおける法解釈方法論の理論的動向と無関係ではない。そこでアメリカにおける法解釈方法論の分析を踏まえ,我が国の公法教育の改善点の視座を得ることを目指す。 本年度は,2010年代以降のアメリカにおける法解釈方法論の理論的動向を主に文献調査により分析作業を進めたほか,アメリカ公法学でChevron判決に並ぶ重要な公法解釈原則を定立したと考えられるWest Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022)の文献調査を行った。同判決は,EPAがCAA§111 (d)に基づき電力会社の発電方法を石炭からよりクリーンなエネルギーに転換させるよう仕向ける規則の制定権限を否定したものである。その結論を導く上で本判決が明示的に依拠するのが「重要問題の法理(MQD)」である。MQDは,1990年代頃から「重要問題」における固有の解釈原則として知られてきたが,本判決は,法廷意見としては初めて,その名称も含め,MQDの適用事例であることに言及した点で注目される。 同判決は,CAAの下でEPAが行ってきた温室効果ガス規制にブレーキをかけるもので,環境法分野の重要判例であるが ,行政法及び法解釈学の観点から検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年間を目標に,初年度を本研究の関連文献の収集・分析にあて,2~3年目を研究調査と中間成果発表,3年目を最終研究成果の発表にあてる計画である。 2022年度は,法解釈方法論の中でも「解釈準則論」に関する文献(著作・論考)を邦文・英文を問わず収集し,文献目録を作成しつつ,分析を並行して行った。8月には研究調査に入った。また「解釈準則論」に関連する日本法の最新判例分析と平行して,アメリカ公法学でChevron判決に並ぶ重要な公法解釈原則を定立したと考えられるWest Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022)の文献調査を行った。概ね,論文の骨組みは構想するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の4月~7月は,日本法分析のための国内調査(最終)を行う予定である。具体的には,本研究の問題意識に沿って,法曹養成の現場において,弁護士や派遣裁判官,実務立法者,法科大学院生と共に,公法学の法解釈実践方法を検証し合う研究会を数次開催する。8月以降は,中間成果として,掲載資格を有する大学紀要に論稿「行政法解釈と解釈準則」を掲載すべく,公刊準備に入る。なお,仮にこの段階で研究が計画通りに進展していない場合には,適宜,本研究に専門知識を有する研究者に対してヒアリングを行い,教示を得ることとする。
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Causes of Carryover |
コロナパンデミックスの影響により,学会や研究会の開催がオンラインとなり,交通費等の出張費用が減ったため,約70000円ほど未使用額が生じた。翌年度はコロナの状況は改善する見込みであり,当該残金を,冬季までの出張2回分の予算に組み入れて,研究費を活用することを予定している。
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