2022 Fiscal Year Research-status Report
国際的組織再編成に対する租税条約政策の今後の方向性
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22K01147
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中村 繁隆 関西大学, 会計研究科, 教授 (20581664)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 租税条約政策 / 国際的組織再編成 / 無差別条項 / グローバルな課税の中立性 / タックス・プライバシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、租税条約上の国際的組織再編成に関する条項(以下、組織再編成条項という)の研究を通じて、国際的組織再編成に対するわが国の租税条約政策の課題を浮き彫りにし、今後の方向性を探求することにある。 2022(令和4)年度は、まず組織再編成条項のうち最善とされる包括的組織再編成条項の機能を分析すべく、アメリカ・カナダ租税条約13条8項を題材に研究を行った。その結果、同項は、グローバルな課税の中立性(Grobal Tax Neutrarity.以下、同じ)という考え方に基づく条項であることが明らかとなった。また、同項との対比により、現時点におけるわが国の租税条約政策が部分的対応に留まっている点に今後の課題のあることも明らかとなった。確かに、同項はアメリカとカナダの課税当局による裁量を容認する点で問題があると指摘されている条項ではあるが、同項の機能はわが国の租税条約政策の今後の方向性にとって参考になり得るものと考えられるため、次年度では当該裁量問題への対応を検討する予定である。 次に、2022(令和4)年度では、次年度への研究をスムーズに移行させるため、(包括的)組織再編成条項の前提となる租税理論の1つと予想された無差別原理を先取りする形で研究した。具体的には、日本・オーストラリアと日本・ニュージーランドの各租税条約等を題材に研究を行った結果、無差別原理は組織再編成条項の租税理論上の明確な根拠にはなり得ないことが明らかになった。ただ、この点に関しては議論の余地が残されているだけでなく、上記2つの租税条約にある無差別条項の実務上の取扱いにおいて、グローバルな課税の中立性を容認する根拠となり得る点があることも明らかとなった。本年度の成果を受けて、次年度でも引き続き無差別原理の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では包括的組織再編成条項の機能分析のみを予定していたが、「5.研究実績の概要」に記載したとおり、次年度の研究予定であった無差別原理の研究にも着手することができた点で、予定より研究が進んでいると考える。ただ、コロナ禍の影響で予定していた外国出張等の実施を見送っている関係で、文献の入手や専門家へのインタビューなどを次年度以降に繰り延べている。以上を総括すると、予定以上に研究が進んでいるとはいえないものの、おおむね順調に研究が進展していると評価できるのではないか、と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023(令和5)年度は、無差別原理に加えて、組織再編成条項の前提となる租税理論として予想されるグローバルな課税の中立性を検討対象に加える予定である。また、「5.研究実績の概要」に記載した裁量問題への対応に関連して、タックス・プライバシーという新たな領域への検討も併せて実施することを予定している。なお、これらの研究を支える文献等の最新情報の入手のため、国内外の学会等への参加、専門家へのインタビューも予定している。
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Causes of Carryover |
主として、2022(令和4)年度に予定した外国出張がコロナ禍の影響で実施できず、次年度使用額が生じた。ただ、2023(令和5)年度に実施する予定である。
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Research Products
(3 results)