2023 Fiscal Year Research-status Report
国際的組織再編成に対する租税条約政策の今後の方向性
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22K01147
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中村 繁隆 関西大学, 会計研究科, 教授 (20581664)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 租税条約政策 / 国際的組織再編成 / 組織再編成条項 / グローバルな課税の中立性 / タックス・プライバシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、租税条約上の国際的組織再編成に関する条項(以下、組織再編成条項という)の研究を通じて、国際的組織再編成に対するわが国の租税条約政策の課題を浮き彫りにし、今後の方向性を探求することにある。 2023(令和5)年度はまず、米加租税条約13条8項を題材にして当該条項の理論的側面の研究を行った。これは、前年度の研究により、包括的組織再編成条項がグローバルな課税の中立性(Grobal Tax Neutrarity)という考え方に基づく条項であり、当該条項の機能がわが国の租税条約政策の今後の方向性にとって参考になり得ることが確認できた結果を受けたものである。本年度の研究によって、13条8項は、OECDモデル租税条約の枠組み自体にそぐわないことが明らかとなった。言い換えれば、わが国にとって、包括的組織再編成条項は理論的観点でなく、あくまでも租税条約上の政策的観点から有用であることが明らかとなった。 次に、2022(令和4)年度では、前年度の研究で明らかとなった包括的組織再編成条項が抱える裁量問題という課題に取り組んだ。研究材料としては、米加租税条約13条8項を用い、かつ、カナダの課税上の取扱いを研究することで、当該裁量問題に対するわが国における解決方法を検討した。検討の結果、以下の結論を得るに至った。わが国の場合、包括的組織再編成条項の内容を受けたカナダ所得税法§115.1のような規定を国内法化することが租税法律主義の観点から望ましいことである。また、カナダ課税当局がInformaton Circularなどを用いているように、わが国の場合でも課税当局が行政文書等を通じて、少しでも課税当局の裁量を軽減させるような行政手続きの透明化を進めていくことが望ましいことである。なお、納税者が課税当局へ提供する情報とタックス・プライバシーとの関係については、次年度に検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タックス・プライバシーに関する研究は当初、令和6年に実施する予定であったが、令和5年度内において着手できている点で、予定より研究が進んでいると考える。ただ、国内出張を実施出来たものの、外国出張等を実施出来ておらず、文献の入手や専門家へのインタビューなどが次年度に繰り延べられている。以上を踏まえると、予定以上に研究が進んでいるとはいえないものの、おおむね順調に研究が進展していると評価できるのではないか、と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024(令和6)年度はまず、「タックス・プライバシー」という新たな領域の検討を予定している。また、2024(令和6年)年度は補助事業年度の最終年度であるから、これまでの研究を総括する論文を英文で執筆したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は主として文献研究であるため、洋書の購入を優先していたが、2023年度の急激な円安によって、洋書購入額が予想以上に高額となり、2022(令和4)年度に予定した外国出張を実施しなかった結果、次年度使用額が生じた。なお、2024(令和6)年度に外国出張等を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)