2023 Fiscal Year Research-status Report
「市民的正義」の形成をめぐる韓国での「司法の政治化現象」に関する実証的研究
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22K01156
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡 克彦 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (90281774)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 市民的正義 / マイノリティ問題 / 司法積極主義 / 韓国法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に韓国におけるマイノリティ問題を中心とした下級法院の動向について現地でフィールドワークを実施した。最上級法院たる「大法院」の判例に変更もたらすほどの下級法院からの一貫したマイノリティの人権を保護する判断を行った。本科研のテーマは、韓国の「司法の政治化」であるが、マイノリティに関する下級法院の判決が大法院での確定判例として定着するほどに、ボトムアップ的に司法の統一的な判断が形成されている。韓国における特異な司法現象である。 この動きは、司法のレベルに止まらない。司法の解釈基準が立法府たる国会の立法行為にまで影響を及ぼしたのである。下級法院を中心とした判例の形成がマイノリティに対する「法的基準」の成立にまで波及したのである。これが新たな「司法の政治化」といういわれる動きである。これについては、公刊論文として執筆の段階にある。今後、研究成果を公開する予定である。本年度は、そのほかに「司法の政治化」の動きとして、司法の「憲法適合的解釈」特に合憲補充解釈で一般法院が、違憲審査の対象となっている法律の内容を事実上、書き換えることを通じて「司法による立法作用」が営まれている実態とそれが生じる司法のメカニズムの解明に取り組んだ「マイノリティ問題に現れた韓国の『積極司法』と憲法適合的解釈のあり方-『良心的兵役拒否』・『トランスジェンダーによる性別変更』の事例を中心に」を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここ数年のコロナ禍で現地での調査が進まなかった。しかし、本年度は数回にわたって現地でのフィールドワークを実施し、計画予定の進捗の遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国の市民団体での動きをフィールドワークで探っていく。司法が訴訟当事者による訴えの提起があって稼働する機関である以上、「司法の政治化」を探る上では訴訟主体側の主張および動向に対する調査は不可欠である。本研究課題の新たな観点から現地フィールドワークを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で使用できなかった資金が一昨年度以降に繰り延べされた形で残余している。今年度から現地へのフィールドを開始しているとはいえ、なお、調査の日程と回数が計画通りに進展せずにいる状況にあった。今後は、遅れている現地調査を計画通りに順次進めていき、研究課題に取り組んでいく予定である。
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Research Products
(3 results)