2022 Fiscal Year Research-status Report
公務員の団体交渉制度における仲裁裁定制度と委任禁止原則との関係に関する検討
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22K01160
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡邊 賢 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 教授 (50201231)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 公務員法 / 生活保障法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、将来的に団体協約締結権を伴う団体交渉制度がわが国の公務員制度に導入される際に併せて仲裁裁定制度の導入も図られると仮定した場合に、仲裁裁定を担う機関が公務員の勤務条件の内容に係る仲裁を行う権限を行使することに対して法律がいかなる規律を行うべきか、について、委任禁止原則の観点から検討を行うものである。 本研究における考察を展開するためには、まず仲裁裁定の対象となる公務員の勤務条件の性格付けが必要となる。勤務条件の性格付けをするためには、性格付けのための視点を確定する必要がある。そのような視点には多様なものがありうるが、公務員の勤務条件には、実際に勤務を提供している状況下(=現役世代)の勤務条件が退職後の諸給付を規律することから、現役世代と退職後を通底する視点を模索する必要がある。そして、これは公務員の多様な勤務形態をも念頭に置いた(端的に言えばいわば正規勤務と非正規勤務を包含しうる)視点ともなり得る。2022年度においては、本研究を本格的に展開する前提として、このような視点を模索し、そのような視点の候補として、早稲田大学の島田陽一教授が提唱する「生活保障法」というコンセプトに着眼し、当該コンセプトが持つ意義、可能性及び限界を考察した。 この考察により、島田教授の提唱する「生活保障法」コンセプトが、従前労働法からの社会保障法の独自性をもたらすために持ち出されていた「生活保障」という考え方とは異なり、労働法と社会保障法の協働を模索するための道具概念であることが明らかとなり、現役世代における雇用保障の問題と、退職後の生活保障の問題を関連付けつつ議論をするための道具が「生活保障法」コンセプトであり、現役世代の勤務条件を退職後の生活保障と連動させつつ、法令による規律の在り方と、委任の在り方を考察する必要があるという観点を獲得したことは、本研究の進展にとって重要な意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
将来的に団体協約締結権を伴う団体交渉制度がわが国の公務員制度に導入される際に併せて仲裁裁定制度の導入も図られると仮定した場合に、仲裁裁定を担う機関が公務員の勤務条件の内容に係る仲裁を行う権限を行使することに対して法律がいかなる規律を行うべきか、について、委任禁止原則の観点から検討を行う本研究は、その前提として、仲裁裁定の対象となる公務員の勤務条件の性格付けの考察が必要となる。そうすると、その考察を行う視点を獲得する必要がある。2022年度においては、そのような視点の候補として、早稲田大学の島田陽一教授が提唱する「生活保障法」というコンセプトに着眼し、当該コンセプトが持つつ意義・可能性・限界を考察することにより、「生活保障法」コンセプトが広い射程を持つことを確認することができ、今後の研究の進展を支える土台となる視点を獲得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
将来的に団体協約締結権を伴う団体交渉制度がわが国の公務員制度に導入される際に併せて仲裁裁定制度の導入も図られると仮定した場合に、仲裁裁定を担う機関が公務員の勤務条件の内容に係る仲裁を行う権限を行使することに対して法律がいかなる規律を行うべきか、について、委任禁止原則の観点から検討を行う本研究は、その前提として、仲裁裁定の対象となる公務員の勤務条件の性格付けの考察が必要となる。2022年度においては、そのような視点の候補として、早稲田大学の島田陽一教授が提唱する「生活保障法」というコンセプトに着眼し、当該コンセプトが持つつ意義・可能性・限界を考察することにより、「生活保障法」コンセプトが広い射程を持つことを確認し、その確認を通して、今後の研究の進展を支える土台となる視点を獲得することができたことから、今後は、この視点を前提として、勤務条件を切り分けつつ、いかなる勤務条件について、法律による規律の要否と、法律による規律と委任の在り方、及び委任の限界について、合衆国における議論の展開を参照しつつ、研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による移動制限のため予定していた出張を行うことができず、そのため生じた残額を翌年度に繰り越したい。
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Research Products
(3 results)