2022 Fiscal Year Research-status Report
Inquiry to Constitutional Theory of Animal Protection: Development of Animal Law and Constitution in America
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22K01163
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
青木 洋英 沖縄国際大学, 法学部, 講師 (20908090)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 動物の権利 / 動物福祉 / 動物法 / 動物保護 / 信教の自由 / 人身保護請求 / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アメリカにおける憲法学及び動物法学での法理論に関する文献及び訴訟実践にかかる判決資料を用いて、①「人権保障ベースの憲法理論のもとで成り立つ既存の社会にとって、法による動物保護とはいったい何なのか」、②「法による動物保護は、いかに既存の憲法判例理論に影響を与え、どのように実現し得るか」を明らかにしようとする。 2022年度には、まずこの後者②にかかる研究として、アメリカにおける信教の自由を理由とした解剖実習受講拒否に関する事例の検討を行った。動物保護の推進と信教の自由保障のあいだには緊張関係があるとされてきたが、ここでは動物保護を推進する側が信教の自由保障の枠組みを用いた主張を行っていることに着目し、両者を調和的に理解する方途を探った。研究成果は2022年6月11日に行われた第83回宗教法学会にて報告した(2024年度刊行の学会誌にて発表予定)。 また、①及び②にかかる研究として、2022年にニューヨークで下された判決(Nonhuman Rights Project, Inc. v, Breheny)の検討を行った。本判決は、アメリカの動物法学者であるSteven M. Wiseの設立したNonhuman Rights Projectという団体が動物園のゾウのための人身保護請求を行ったものである。Wiseは、動物倫理学において議論される「動物の権利」論を、法理論として、実際に訴訟の場で主張できる形で取り入れようと、研究及び実践を行っており、本判決を検討することで、ニューヨーク州の裁判所がこれをどのように受け止めたかを明らかにすることができる。判決の検討の成果は、2023年3月に論文として発表した。 さらに、2022年度末には、研究のアウトリーチ活動の一環として、沖縄法政研究所の第83回研究会にて「アメリカにおける動物裁判の展開と類型」と題した研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度以降の研究のための国内外の憲法学・動物法学の関連文献収集や情報収集を行った。また、論文1点の発表及び研究成果の報告2件を行い、当初の予定とは着手する順序が若干前後した点もあるものの、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年1月には、現代正義論の騎手のひとりであるMartha C. Nussbaumの著書「Justice for Animals: Our Collective Responsibility 」(Simon and Schuster, 2023)が公刊された。そこで今後の研究では、まず本書を中心としたNussbaumの議論の分析を通じて、動物の権利の内容を憲法理論としてどのように受容し得るかについて検討したい。また、来年度後半には国外出張を企画し、現地での文献調査を行うことを計画している。調査・検討の結果は、次年度の後半にて学会で報告するとともに、論文として刊行することを目指す。
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Causes of Carryover |
執行状況は99%であり、資料収集を行った際の端数として1%の金額が残っている。次年度以降の資料収集において引き続き利用する。
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Research Products
(3 results)