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2023 Fiscal Year Research-status Report

違憲審査の政治的・社会的統合機能に関する比較憲法学的研究

Research Project

Project/Area Number 22K01168
Research InstitutionKobe Gakuin University

Principal Investigator

塚田 哲之  神戸学院大学, 法学部, 教授 (00283383)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 小竹 聡  拓殖大学, 政経学部, 教授 (20252299)
Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords違憲審査 / 合衆国最高裁判所 / アファーマティヴ・アクション / 先例拘束性と憲法判例の変更 / 裁判官選任過程
Outline of Annual Research Achievements

本研究課題の2年目である2023年度においても、初年度から継続して、厳しい政治的・社会的対立(「分断」)状況にあるアメリカ合衆国における違憲審査の現状把握とその背景・規定要因についての検討を行った。合衆国最高裁判所は、2022年の人工妊娠中絶判例変更に続き、2023年には大学入学者選抜における人種の考慮(アファーマティヴ・アクション)について、明示的判例変更は行わなかったものの、先例が認めてきた人種の考慮を厳しく制限する判決(Students for Fair Admissions, Inc. v. President & Fellows of Harvard College)を下しており、「分断」状況下における最高裁の憲法判断の正統性は引き続き重要な検討課題となっている。
そこで2023年度においては、(1)アファーマティヴ・アクションについての上記判決を含め、最高裁による近時の重要判決について、合衆国の政治的・社会的環境とそこにおける政治・社会運動体の役割を重視しつつ、理論的には先例拘束性原理および裁判官選任過程を意識して検討を継続するとともに、(2)オバマ大統領の任期末からトランプ大統領の任期前半期(2015-2018年)を直接の対象として、上記観点から従来研究代表者・研究分担者・研究協力者が進めてきた合衆国最高裁判例の検討を書籍にまとめる作業に注力することとした。(1)については、2023年9月、10月および2024年3月に研究会(対面方式)を開催して、判決計6件および研究報告・書評計3件を検討した。また、(2)については、『法学セミナー』誌連載「アメリカ憲法判例の最前線」から選択した判決および書き下ろしを加えて、小竹聡・塚田哲之編著『アメリカ憲法判例の展開2015-2018』(日本評論社、2023年9月)として公刊した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2023年度においては、近時の主要な合衆国最高裁判決についての検討を進め、とりわけ、人工妊娠中絶に関する判例変更、大学入学者選抜における人種の考慮を厳しく限定する判決など、あらためて先例拘束性原理と憲法判例の変更に関する論点を1つの重要な検討課題とした。理論面では、最高裁による憲法判断を規定する要因の1つである先例拘束性原理は、一般的には現状維持的機能を果たし、あるいは現状を変更する場合でも漸進的とする抑制的機能が想定され、これら機能を通して一定の統合作用を果たしうると考えられるが、上記論点のように先例自体が厳しい政治的・社会的対立の渦中に置かれてきた場合には、先例拘束性原理とその適用もまたその対立を免れえず、先例を変更する場合はもちろん、変更しない場合でも先例理解の当否をめぐってさらなる政治的・社会的対立を生み、その結果「分断」状況を緩和する方向にははたらいていないという理解を抽出している。また、最高裁裁判官を含む連邦裁判官人事の党派的運用が、下級裁判所レヴェルでも党派的との批判を受けるような判断につながり、さらにそれが最高裁に上訴され一定の判断を引き出すことで、「分断」状況の再生産とも呼ぶべき効果を生んでいることも確認している。これらの成果は論文・研究報告等の形で順次公表しており、また「研究実績の概要」欄記載の書籍(『アメリカ憲法判例の展開2015-2018』)においても可能な範囲で直近の諸判決にも言及するなど、本研究課題の成果が反映されている。
一方、上記以外の理論的課題については、なお検討の途上にあり、また、2023年度に予定していたアメリカ合衆国出張は実施できていないことから、十分研究を進められていない面も残されているが、総体としてはおおむね順調と考えられる。

Strategy for Future Research Activity

最終年度にあたる2024年度においては、(1)引き続き重要な最高裁判決をその政治的・社会的背景も含めて検討する作業を進め、(2)最高裁による違憲審査と政治体制・社会構造との関係の理論的把握、最高裁による憲法判断の規定要因についての理論研究に注力する。また、(3)前年度実施できなかったアメリカ合衆国への出張を行い、資料収集および可能であればインタビューを通して上記(1)(2)に関する知見を補強することを計画している。これらを通して、本研究課題のとりまとめ作業を行う。

Causes of Carryover

物品費については図書(和文・欧文)を中心におおむね予定通り使用することができた。また、対面方式での研究会を開催したため、旅費・謝金についても一定額を使用することができたが、2023年度当初に予定していたアメリカ合衆国への出張が実施できなかったため、そのための旅費相当分を含む次年度使用額が生ずることとなった。次年度使用額については、2024年度に計画中のアメリカ合衆国出張のため使用するとともに、関連図書の購入に使用する。

  • Research Products

    (13 results)

All 2024 2023

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results,  Open Access: 3 results) Presentation (7 results) (of which Invited: 4 results) Book (3 results)

  • [Journal Article] 翻訳―Shelby County v. Holder, 570 U.S. 529 (2013) 判決2024

    • Author(s)
      小竹聡
    • Journal Title

      拓殖大学論集 政治・経済・法律研究

      Volume: 26-2 Pages: 125-166

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 法は「うろつく」ことを処罰できるか―刑罰法規の漠然性とデュー・プロセス2023

    • Author(s)
      小竹聡
    • Journal Title

      同志社法学

      Volume: 438 Pages: 753-776

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 現在の合衆国最高裁判所をどう見るか―アメリカ合衆国における憲法判決の現在2023

    • Author(s)
      小竹聡
    • Journal Title

      法学館憲法研究所Webサイト、オピニオン https://www.jicl.jp/articles/opinion_20230823.html

      Volume: - Pages: -

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 合衆国最高裁判所における中絶判例の変更2024

    • Author(s)
      小竹聡
    • Organizer
      北陸公法判例研究会
    • Invited
  • [Presentation] アメリカ社会と銃規制―New York State Rifle & Pistol Association, Inc. v. Bruen, 597 U.S. 1 (2022) を契機として2024

    • Author(s)
      小竹聡
    • Organizer
      アメリカ憲法研究会
  • [Presentation] ロバーツ・コートと中絶判決―2022年6月24日判決が意味するもの2023

    • Author(s)
      小竹聡
    • Organizer
      アメリカ学会第57回年次大会シンポジウム
    • Invited
  • [Presentation] 中絶判例の変更と生殖の権利の将来2023

    • Author(s)
      小竹聡
    • Organizer
      同志社大学アメリカ研究所第29回コロキアム『中絶の権利をめぐる論争を多角的に検討する』
    • Invited
  • [Presentation] 判例研究:人種を考慮する入学者選考プログラムを違憲とした合衆国最高裁判所判決 Students for Fair Admissions, Inc. v. President and Fellows of Harvard College, 600 U.S. 181, 143 S. Ct. 2141 (June 29, 2023) (No. 20-1199)2023

    • Author(s)
      塚田哲之
    • Organizer
      中部憲法判例研究会第164回研究会
    • Invited
  • [Presentation] [2022 年 10 月開廷期判例紹介] Students for Fair Admissions, Inc. v. President and Fellows of Harvard College, 143 S. Ct. 2141 (June 29, 2023) (No. 20-1199)2023

    • Author(s)
      塚田哲之
    • Organizer
      アメリカ憲法研究会
  • [Presentation] 現在の合衆国最高裁判所をどう見るか―アメリカ合衆国における憲法判決の現在補遺2023

    • Author(s)
      小竹聡
    • Organizer
      アメリカ憲法研究会
  • [Book] アメリカ最高裁とロバーツ・コート2024

    • Author(s)
      宮川成雄編、小竹聡ほか執筆
    • Total Pages
      352
    • Publisher
      成文堂
    • ISBN
      9784792307325
  • [Book] アメリカ憲法判例の展開と分析―2015-20182023

    • Author(s)
      小竹 聡、塚田 哲之(編著)
    • Total Pages
      320
    • Publisher
      日本評論社
    • ISBN
      9784535527133
  • [Book] 水島朝穂先生古稀記念 自由と平和の構想力2023

    • Author(s)
      愛敬浩二ほか編、小竹聡ほか執筆
    • Total Pages
      592
    • Publisher
      日本評論社
    • ISBN
      9784535526716

URL: 

Published: 2024-12-25  

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