2023 Fiscal Year Research-status Report
On an impact upon the current international legal order through the influence caused authoritative regimes such as China
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22K01178
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池島 大策 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (50255577)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 権威主義 / 民主主義 / 中国 / 一帯一路政策 / 環境 / 海域紛争 / 気候変動 / 海面上昇 |
Outline of Annual Research Achievements |
民主主義は西洋型のみが模範といえようか。選挙が権力の正当化に使われたり、 格差の固定や世襲の弊害が生じたり、政治の固定化、民意の分断化、金権腐敗政治などは民主主義的統治にも共通の問題である。統治の根拠たる民主主義は、政権の正統性(legitimacy)を占う装置や手段として選挙を重視する。これに対し、権威主義も現代では、一部の国を除けば、何らかの選挙または相当の装置を駆使して、自らの政権の正統性を担保する。その違いは何か。 選挙における民主主義的な手法の特性に、(世論)意見の多様性、思想表現の自由、結社・集会の自由などの保障(憲法による)を前提とする。パフォーマンスだけを重視して内実の伴わない政治は、一部の国民の人気取りから多数派への支持拡大につながりやすい。しかも、この動きはナショナリズムと結びつきやすく、メディアを駆使した扇動政治を加速させ、時には急進的な主張にもつながりやすい。こうした国内事情は、対外的にも様々な影響を政策上及ぼす。特に、条約交渉・締結の際に顕著に国内世論や統治状況などが反映される場合が多い。 以上の考察分析から、気候変動に伴う海面上昇が諸国に与える影響に関して、論文、共著書や学会発表において、政治体制を超えた人類共通の課題としての環境問題という視点から、政治的イデオロギー的な観点よりも、科学技術的な判断による国際法形成の必要性を主張した。 海洋法関連でも、南シナ海問題は、沿岸当事国の政治体制を超えた地域固有の歴史的文化的背景を踏まえた紛争管理体制が敷かれるべきである旨を海外発表で行った。これらの環境問題や海域利用問題は、国内統治体制に一定の相互的な影響を与えつつも、政治的要素を極力削減したうえで、人類共通の課題という視点から国際協力と連帯の推進が望まれることが分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元々考えていた国内体制の違いからくる外交政策が国際法形成にどのような影響を与えうるかという観点は、概ね順調に、海洋を中心とした環境問題や海域紛争などを事例研究として、考察を多面的に展開できていると考えている。さらには、中国にもう少し重点を置いて深く切り込む必要性が出てきているが、分野の多面性や捉える事項の多さなどから、ある程度、取り扱う国際法上のイッシューを絞ることも効率的であり、2年目として悪くないと思われる。 むしろ、3年目に繋げる考察対象として、海洋関連の問題以外にも、大気圏や地球環境資源、サイバー空間などといった多面的な次元での国際法形成の過程に、中国をはじめとして権威主義的と捉えられる政治体制と民主主義的体制側の諸国との取組の違いがどのように顕著にみられるのかを今後は検討を広げていける道筋がつけられたと思われる。 2年目の進捗状況は、少なくとも2度にわたる海外での学会発表や、それとの関連性がある論文2本の出版が英語によって行われたことからも、一定の成果を上げるほど進展したことに顕現しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今のペースを保持しつつ、個別的なケーススタディをできるだけ多く見つけて、その共通の特色や課題を抽出することに専念したい。とりわけ、コロナ禍がほぼ終息に向かい、海外出張や海外発表がさらに円滑に行いやすくなっている事情を踏まえて、中国をはじめとした海外の研究者ともコミュニケーションをはかり、協働作業の可能性を高める努力を一層行いたい。 また、海外の学術誌への投稿をさらに増やし、そのインパクトとリアクションを検討したうえで、自分の研究の幅を広げたい。具体的には、国際法形成過程における民主主義的要素やその度合いがどれ程関わってくるか否かを、出来る限り広範な国際法・政治の各種分野において検討を進めていくことである。
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Causes of Carryover |
2,345円は、当初の予想を超えて急激に進んだ円安により、海外からの輸入書籍の購入費に差額が広がり、その調整を行うため、次年度に残さざるを得なかった金額である。昨年度に購入できなかった書籍等の輸入物品については、購入延期によって調整したことから、今年度中に購入して、円滑な研究活動と適正な予算配分に努めたい。
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