2023 Fiscal Year Research-status Report
雇用終了後の競業避止義務の実現手段に関する比較法的展開
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22K01197
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
植田 達 常葉大学, 法学部, 講師 (50835147)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 競業避止義務 / アメリカ労働法 / 権利救済論 / 職業選択の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、主たる比較対象国であるアメリカ法の調査、分析を開始した。アメリカでは、近年は、2021年に模範法としての統一雇用競業避止特約法が統一州法委員全国会議(NCCUSL)により策定され、2024年にアメリカ連邦取引委員会により競業避止特約禁止規制が公表されるなど、連邦レベルで競業避止特約規制を統一する機運も高まりつつあるが、競業避止特約に関するルールは、州(法域)によって異なる。 その中でも本年度は、日本法とは異なり、制定法を設けて競業避止特約の効力とそれに基づく権利救済をコントロールするテキサス州法について検討を加えた。もともとは同州でも、日本法や既に前年度に研究したニューヨーク州と同様に判例法によって競業避止特約の効力を制限していたところ、同州の判例法を明確化すべく、州の制定法が定められた。ところが、制定法化に伴い、かつてよりも特約が有効となる範囲が州最高裁判所の判例により狭められ、それもまた変更されるなど、州最高裁判所による要件解釈をめぐる混乱も見られた。この点は、日本法における立法論としても、公序による特約の効力制限から特約の規制に合わせた制定法に移行するのであれば、その際には要件の定立のあり方に留意すべきことが窺える。また、有効な競業避止特約に基づく権利救済のあり方として、テキサス州の制定法でも、アメリカのほかの州と同じように競業避止特約を合理的な範囲・内容に縮減する手法が採用されているが、その場合の救済手段は、競業の差止めに限定し、損害賠償までは求めることができないと定めている。有効な特約に基づく権利救済の議論の集積が必ずしも十分でない日本法にとって、このような詳細な制度設計は示唆に富むものであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初より、本年度は、前年度の研究成果を前提として、アメリカにおける州法での競業避止特約をめぐる法制度について、データベースを含む文献による調査と、その研究結果を随時発表することを予定しており、その計画の通りに、進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果を踏まえ、引き続き、アメリカ法を中心に外国法についての調査・研究を行う。より具体的には、州法としてカリフォルニア州法を中心に競業避止特約を広く禁止する州の制定法を、連邦法としてアメリカ連邦取引委員会が2024年4月に発した競業避止特約禁止規制に検討を加える予定である。最終年度となる次年度には、文献調査に加え、アメリカ法の専門家からのヒヤリングやディスカッション、現地の大学図書館などでの資料収集等のため、アメリカに出張することを考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の研究は、昨年度に収集した資料等により十分に実行できるものであったため、当初に想定していたよりも、少額の支出で研究を遂行することができた。 次年度では、外国への出張を考えており、そのために使用することとしたいと考えている。
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