2023 Fiscal Year Research-status Report
司法と立法の適切な役割分担に基づく被疑者に対する取調べの手続的規制
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22K01215
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
川島 享祐 立教大学, 法学部, 准教授 (90734674)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 取調べ / Miranda法理 / 強制処分法定主義 / 違法収集証拠排除法則 / 直接主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,被疑者の取調べに対していかなる手続的な規制が及ぼされるべきかという問題について,国家機関間の役割分担という視点の下,比較法的・歴史的検討を行い,具体的な解釈論・立法論の提示を目指すものである。今年度も,昨年度に引き続き,捜査法・証拠法双方から取調べに対する手続的規制について検討し,概ね計画どおりに研究を進めることができた。 まず,捜査法的観点からは,アメリカの取調べを手続的に規制するMiranda法理の検討を行った。同法理は司法府たる連邦最高裁が定立したものであるが,被疑者の権利行使の有無によって取調べを規制しようとする同法理の有効性については悲観的な見解も有力である。また,アメリカでは,司法と立法の役割分担という観点から,なぜ立法府ではなく司法府である連邦最高裁が,予防的な法理として同法理を定立できるのかという問題について議論がある。今年度は,これらの学説の検討を行った。 次に,司法と立法の役割分担という点に関しては,強制処分の創出を司法府ではなく立法府に委ねる強制処分法定主義や,司法府が創出したもののその正統性に関して議論が存在する違法収集証拠排除法則についての分析が重要となる。今年度は,これらの法理ついての分析も行い,研究成果の一部をそれぞれ『刑事訴訟法判例百選』,『法律時報』において公表した。 また,今年度は,証拠法的観点から,ドイツの直接主義について,我が国の伝聞法則との相違を含めて,理論的な分析を行った。直接主義は,被疑者・被告人によるものを含む公判外供述を公判に顕出する際のルールとして,我が国においても言及されることがある。しかし,ドイツにおけるそれは職権主義を基礎に置くものであり,それを表面的にのみ理解して当事者主義を採用する我が国に導入しようとすることには慎重であるべきであるとの理解に至った。この研究成果の一部は『法律時報』において公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究業績の概要」欄で述べたように,概ね順調に調査・研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には,捜査法及び証拠法の観点から,概ね順調に,被疑者の取調べに対する手続的規制について検討を進めることができた。来年度は,引き続きアメリカ法について,裁判傍聴や現地法曹へのインタビュー等を含めた調査を行うとともに,イギリス法や欧州人権裁判所判例についての調査・検討を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
文献購入の必要性が想定ほどではなく,また,学内会計のルールにより出張時の旅費の大部分が自己負担となったため,次年度使用額が生じた。 来年度には,アメリカにおける在外研究を継続し,図書を購入するとともに,同国内や同国から日本やフランス等への出張を予定している。
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