2022 Fiscal Year Research-status Report
物上保証の構造と規制のあり方――「他人の債務のための担保」の理論の構築を目指して
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22K01221
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 由起 北海道大学, 法学研究科, 教授 (40400072)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 民法 / 担保 / 物上保証 / 担保法改正 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人的保証と物的保証を「他人の債務のための担保」という観点から捉え直し、 物上保証における担保権者と担保権設定者の関係を精査したうえで、両者の比較検討をつっじてこれらの核となる原則を明らかにし、他人の債務のための担保についての統一的な法解釈・法規制の可能性とその限界を探ることを目的としている。 本年度は、2021年9月に成立したフランス担保法改正オルドナンスにおける保証、動産・債権に関する各担保の制度について、条文・公式解説の翻訳を共訳として公表した。また、物上保証の問題を考えるうえでは債務者が担保提供者である場合の担保の効力を利い介意することが不可欠であることから、フランスにおける各種の債権担保(所有移転型担保と債権質)の仕組みと、これらの倒産手続の処遇がこの40年間でどのように変遷してきたかに関する分析を行い、論説として公表した。動産・債権担保については、2023年1月に日本で担保法改正中間試案が公表されたこともあり、フランスの担保法と比較しながら分析を行い、それぞれの現状と課題を明らかにし、2023年2月17日に開催された日本の担保法改正の中間試案についての意見聴取および典型意的な問題点に関する比較法的議論を行ったフランス語圏3か国(フランス・ベルギー・ルクセンブルク)との国際シンポジウムでの質問票の作成・調整役としての成果に結びつけた。 物上保証について、フランスの改正法における条文上の位置づけや人的保証とどこまで近づけた扱いにすべきかという問題について、改正経緯を辿って検討し、フランスの立法者の立場とその課題を明らかにした。日本における物上保証の処遇(保証との処遇の相違など)を明らかにするための裁判例の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フランスの2021年担保法改正の分析を中心に作業を行ったが、この作業により、フランスの他人のための物的担保および人的保証の最新状況については、倒産手続における処遇の変遷も含めて、一定程度明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度後半に作業を開始した日本における物上保証概念について、学説史の検討を本格的に行う。また、裁判例の分析により、物上保証についてどのような局面でいかなる点が重視されて当該結論が導かれたのかを明らかにし、日本法における物上保証論の輪郭を描き出す。 フランス法については、引き続き学説史の検討を進める。また、フランス法の最新状況としては、個人の起業を促進するために、個人事業主が事業に失敗した際に、その個人資産を保護するという政策が推し進められる中、2022年には、個人事業主の責任財産の分離を一般化する法改正が行われた。そこで、同制度のもとで、個人事業主が、自己の事業の負債を担保するために自己の個人資産に属する財産をもって物的担保を設定/保証を締結する可能性についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた学会参加等について、新型コロナ感染拡大防止の観点から、対面式での参加を諦めてオンラインでの参加に切り替えたため、未使用額が発生した。 今年度は、研究会等が対面でも実施されることが多くなるために、旅費として使用し、また、この間生じた改正関係の文献の購入に充てる予定である。
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Remarks |
国際シンポ「Analyse sur la reforme du droit des suretes au Japon, vue du droit francais, belge et luxembourgeois」(2023年2月17日)において、担保法改正に対する各国からの意見聴取・議論を行うため、片山直也教授(慶応大学)、瀬戸口祐基准教授(神戸大学)と共に質問票作成、司会・調整役を行った。
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