2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Research on Discretionary Trusts
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22K01244
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
木村 仁 関西学院大学, 法学部, 教授 (40298980)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 裁量信託 / アメリカ法 / 受託者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、アメリカにおける裁量信託の受託者の裁量権行使または不行使に関する受託者の責任を研究した。受託者に裁量権を与えた委託者の意思を尊重しつつ、信託条項で定められた受益者の利益を保護するために、受託者による裁量権の濫用があった場合には、受託者が責任を負うとされている。最終的には、裁量権行使における受託者の主観的態様または動機、信託の目的および裁量権が付与された目的、裁量権行使の基準、委託者が知っていた受益者の状況、委託者と受益者との関係、受益者を扶養する義務を負う者の存在、および関連する信認義務の内容などが総合的に勘案され、裁量権濫用の有無が判断されていることを明らかにした。 受託者による裁量権の濫用が肯定されるのは、①不誠実なまたは不当な動機に基づいて裁量権を行使した場合、②必要な情報を取得せず、もしくは必要な情報を考慮しなかった場合、または③裁量権行使の内容が合理性を欠く場合である。各類型において、アメリカの判例が、いかなる考慮要素にもとづいて裁量権濫用の有無を判断しているかを分析した。 また、裁量権の濫用が肯定される場合、受益者にいかなる救済が与えられるか、アメリカの判例を分析した。特に、信託の目的、裁量権が付与された目的および裁量権行使の基準などにより、受益者の状況に応じて給付されるべき合理的な額を導き出すことが可能な場合には、受託者が一定額の支払を命じられることがあることが判明した。 以上の点を明らかにし、分析を加えた論稿を、「アメリカ法」2022-1号に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、裁量信託の受託者の責任に関するアメリカ法の状況を検討し、これを公表することができたので、研究はおおむね順調に進展しているといえる。 日本においても、裁量信託の受託者の義務違反を認めた下級審判例が現れているが、その理論構成を検討する必要がある。今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、アメリカ法において、裁量信託の受益者の債権者または受益権の譲受人が、いかなる場合にいかなる方法により受益権に対して権利行使をすることができるかを明らかにし、分析を加えることとする。特に、第2次信託法リステイトメントまでのルールが、第3次信託法リステイトメント、統一信託法典および各州の制定法により、いかなる理由でいかなる変遷を遂げたのかを精査することを計画している。そのうえで、我が国において、裁量信託および扶養信託の受益権の譲渡性・差押可能性がいかに解されるのか、アメリカ法の分析から示唆を得て検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、国内外における信託法研究者および実務家にインタビュー調査をすることができなかったため、旅費に次年度使用額が生じた。 また、購入を予定していた海外の文献の出版が遅れたため、その購入費に充てる物品費に残額が生じた。 2023年度の研究費は、国内外において研究課題に係るインタビュー調査を実施し、必要な海外の書籍を購入すること等に使用することを計画している。
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Research Products
(1 results)