2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K01256
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒 達也 九州大学, 法学研究院, 准教授 (20547822)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 金融商品取引法 / リスク情報開示 / 経営者による意見の開示 / 民事責任 / 機関投資家 / 会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(2022年度)は、アメリカにおける会社の事業等のリスク要因に関する情報の開示をめぐる制度改正の経緯について、SEC(証券取引所委員会)による文書資料を中心に調査した。また、開示すべき義務があるリスク情報を開示しなかった場合における証券発行会社等の民事責任について判断した裁判例について研究した。今年度(2023年度)は、昨年度の研究成果をまとめて論文を公表した。当該論文において、アメリカにおけるリスク情報の開示に関する制度の概要とその解釈や改正の経緯を整理し、日本と同様にリスク情報の開示内容が一般的抽象的なものであることが問題視されており、企業ごとに特化した内容とするように促すための制度改正がなされていることを明らかにした。また、実質的な観点からの検討や実証研究の結果を踏まえれば、現状では、リスク情報の不開示について一律に損害賠償責任を否定する必要まではないが、開示義務の対象となる情報の予測可能性を向上させるなどの改善が必要であると論じた。 さらに、今年度(2023年度)は、経営者などの情報開示者による主観的評価を伴う情報の開示に関する責任について調査を進めた。これは、会社の事業等のリスク要因に関する情報の開示をめぐる責任について研究する過程で、本研究の課題である証券訴訟における機関投資家の役割や義務との関係においては、リスク要因に関する情報に限らず、より一般的に経営者などの情報開示者による主観的評価を伴う情報の開示に関する責任を検討する必要があると考えたからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
会社の事業等のリスク要因に関する情報の開示をめぐるアメリカ法の制度や裁判例に関する研究結果を既に論文として発表しており、また、経営者などの情報開示者による主観的評価を伴う情報の開示に関する責任について調査を進めている。 したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題である証券訴訟における機関投資家の役割や義務という観点からは間接的な関係を有するに過ぎないかもしれないが、経営者などの情報開示者による主観的評価を伴う情報の開示に関する責任について研究を進めて、その成果を論文として公表し、研究会でも発表していく。
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Causes of Carryover |
物品費について、大学で契約しているデータベース経由で入手できる論文や判例で調査研究を進めることができたため、物品費の支出が予定よりも少額となった。今年度(2023年度)は、昨年度の研究成果をまとめて論文を執筆する作業が中心であったため、研究補助者の雇用に費用が掛からなかった。次年度使用額については、書籍の購入や研究補助者の雇用などに支出する予定である。
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