2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Appropriate Regulation on Small Minority Controlling Shareholder under Company and Financial Market Laws
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22K01265
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 信男 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60267424)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 少数出資会社支配 / 複数議決権株式 / 少数出資支配株主 / Dual Class Stock / 居座りリスク / 搾取リスク / 多数出資少数派株主 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保有株式数では少数でも議決権数において多数派となり会社経営を支配することを可能にするDual Class Stock等の少数出資会社支配のための法的スキームを対象とし、この種のスキームを必要とする上場会社ないし公開会社が現に存在している実情に鑑み、こうした少数出資会社支配を必要な範囲で許容しつつ、そのことに伴い発生するおそれのある少数出資支配株主の居座りリスク、残余の多数出資少数派株主に対する搾取リスク等を効果的にコントロールし得る会社法および資本市場法上の規律の在り方を探ることを目的とするものである。 補助事業期間2年目に当たる令和5年度は、前年度における関連文献調査とその分析を基に、“Comparative study on legal solutions for possible risks to be incurred by the dual class share structure used by listing companies”という題名の英文論文を、早稲田大学比較法研究所の英文紀要Waseda Bulletin of Comparative Lawの42号(2024年1月発行)に公表した。この論文では、上場会社等の公開会社による複数議決権株式の発行を許容していない日本の会社法の下で種類株式制度と単元株式制度の組合せにより実現される事実上のDual Class Share Structureの事例としてサイバーダイン社のケースを取り上げた上で、会社法において公開会社による複数議決権株式の発行を認める英国・シンガポールにおける法律上のDual Class Share Structureに対する多数出資少数派株主保護のための法的取組みを参照し、この面でのわが国の制度見直しの方向性と具体的方策を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、少数出資会社支配を可能にするDual Class Stockや複数議決権株式等の法的スキームについて、この種の仕組の利用を必要な範囲で許容しつつ、当該法的スキームの利用に伴い生じ得る居座りリスク・搾取リスクのほか、会社支配権市場としての資本市場の機能低下という問題を解消ないし防止するための会社法・資本市場法上の規律の在り方を考察することを目的とする。 当該研究目的の遂行のため、本研究は、第1に、補助事業期間2年目となる令和5年度に、前年度における文献調査等の成果を踏まえ、予定通り、具体的な研究成果として、研究実績の概要の欄に掲げた英文論文を所属大学の研究所発行の英文紀要に公表した。 第2に、2024年1月に発表した当該英文論文を関係する海外研究者に提供して,英国法制や2023年12月に法改正を実現したドイツ法制に関し、イギリスBirmingham大学ロースクールのL.Talbot教授やA.Kokkinis准教授、ドイツGoethe大学のTobias Troeger教授らとの討議を行い、海外研究者の大きな関心を惹くことができた。特に、ドイツを始めとするEU加盟国の法制に関しては、EUの指令改正の動きを含め令和6年度に分析を行い、その成果を日本EU学会で報告することを予定しており、当初の計画を超える研究範囲の質的・量的進展が期待される。 したがって、本研究は、補助事業期間中の研究実施計画に照らし、2年目の令和5年度に関しては、令和6年度に向けた研究内容の拡大等、当初の計画以上に進展していると考えられる。 本研究の現在までの進捗状況として、「当初の計画以上に進展している。」との自己評価を選択したのは、以上の理由による
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の補助事業期間は、令和4年度から令和8年度までであるところ、第1に、令和6年度は、「EUにおけるMultiple Votes Share Structure利用会社による株式上場の許容と多数出資少数派株主の保護」と題する学会報告を2024年度日本EU学会研究学会大会(2024年11月10日)にて行い、その成果論文を日本EU学会年報に公表する予定である。 第2に、本研究の検討課題が会社法・資本市場法制に係る先進諸国の共通課題の一つでもあることから、令和6年度以降も、イギリス・Birmingham UniversityのL.Talbot教授および同教授との共同研究を通じて開拓した独仏研究者、独自にコンタクトを確保する予定のシンガポールの会社法・資本市場法研究者らとの国際共同研究を展開する。 第3に、本研究の検討課題は、わが国においては、東京証券取引所の対応の在り方とも関連するため、令和6年度以降も、東京証券取引所の担当者へのヒアリング等を実施し、国内動向の把握・検討も併せ行うことを計画している。 第4に、上記の共同研究等に加え、研究会での報告および文献調査の継続等を踏まえ、研究業績となる論文(日本語または英語)を令和6年度以降も継続して公表し、国内外に研究成果を発信していく。
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Causes of Carryover |
令和5年度に関しては、次年度使用額が発生しているところ、その理由としては、旅費について、国際線航空券料金等が依然として高い状態にあるため、閑散期を利用して比較的安い航空券を選択するなどして節約に努めたこと、出張期間を短くしたこと等による。人件費・謝金・その他の各項目については、イギリス等での現地調査に使用する資料等の英文での作成を自ら行い、外部委託をしなかったため、その分が未使用の形で残存しており、次年度使用額発生の一つの理由となっている。 当該次年度使用額については、これを令和6年度分として請求した助成金と合算して使用することとなるところ、当該助成金は、2024年11月に予定している日本EU学会での研究報告に向けたEU内での実地調査のほか、欧州やシンガポールの研究者等との国際共同研究実施のために使用することを予定している。
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