2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K01268
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
荻野 奈緒 同志社大学, 法学部, 教授 (30546669)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 不可抗力 / 新型コロナウイルス / 賃貸借 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本法については、まず、2021年7月1日に開催された日仏セミナー「Covid-19と損害賠償法」において報告した内容をまとめ、Cahiers Louis Josserand no1 du 28 juillet 2022で公表した。また、比較法国際アカデミーの第21回国際会議において、「不可抗力の契約債務への影響」に関するナショナル・レポートを提出した。その内容は、アスンシオン比較法国際会議ナショナルレポート集(ICCLP Publications No.16)に掲載された。これらに加え、新型コロナウイルス感染症が契約関係に与える影響に関する裁判例(東京地判令和3・7・20金商1629号52頁、東京地判令和3・9・27判時2534号70頁など)について検討した。 フランス法に関しては、<新型コロナウイルス感染症に対処するために政府が採った措置により、賃借物件における営業の休止を余儀なくされた商事賃借人は、営業休止期間中の賃料支払義務を免れることができるか>という問題に関する学説を整理し、破毀院第3民事部2022年6月30日判決(Pourvois no 21-19.889、no 21-20.127、no 21-20.190)について検討した。同判決は、賃借人の主張(不履行の抗弁、不可抗力、賃借物の滅失に関する民法典1722条)をいずれも排斥し、賃借人は賃料支払義務を免れないとしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、主として、不可抗力事象が契約関係にどのような影響を与えるのかを具体的事例に即して検討することを予定していたところ、フランスの破毀院の判例と、日本の裁判例をそれぞれ検討し、両者の比較を行った。また、債務不履行責任の免責事由としての不可抗力に関する理論的な考察を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、引き続き事例研究と理論的な考察を行うとともに、不可抗力の効果に関する検討を開始することを予定している。また、可能であれば、フランスで資料調査・聴き取り調査を実施したい。 その後も、当初の計画どおり、研究を進める予定である。
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