2023 Fiscal Year Research-status Report
日仏比較法による「暗号資産」の活用可能な担保制度に関する研究
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22K01270
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
原 謙一 西南学院大学, 法学部, 教授 (80759192)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 担保物権 / 暗号資産 / NFT / ブロックチェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、暗号資産やNFT(ブロックチェーンを用いた財)に関する法的枠組みのうち、実際に、暗号資産やNFTを活用するにあたって生じる課題を解決し得る枠組みを絞りこむための調査・検討を実施した。 まず、暗号資産であれ、NFTであれ、いずれも人(自然人・法人)に帰属し、その人から他者へ移転したり第三者に取得されたりすることが考えられる。そのため、これらの財をいかなる法的性質で理解するかということは、その性質に即し、いかなる帰属・移転の仕組みを用いるかということとかかわり、これらの判断の先に暗号資産やNFTを担保目的で処分する法律構成を検討することが可能となる。 このような視点から、暗号資産・NFTの両者を対比しながら、これらの帰属、譲渡及び第三者との関係を一層明確化することで、これらの財を担保化するにあたっての検討を深める前提を整えた。すなわち、前記いずれの財もブロックチェーンという記録によって特定される財であり、これは記録で特定される振替株式に類似した存在と評価可能であり、同株式の法制度(帰属、移転及び第三者保護の制度)を暗号資産やNFTに類推適用することを示した。 さらに、振替株式制度の類推適用が、実際に暗号資産やNFTに生じている諸課題(2022年度に把握した実務上の諸課題)の解決に資するか否かも検討したところ、特に、NFTが著作権と関連づけられるような事例において、振替株式に関する運用に基づく処理によって、実務上の課題(著作権と紐付くNFTの譲渡において著作権とNFTの帰属者が分離するという課題)が解決される余地があることを研究報告・論文等で公表した。 これは、暗号資産やNFTの基礎的な法制度の枠組み(帰属、移転及び第三者保護の制度)を明らかにするという理論的な意義を有するだけでなく、その枠組みが実際上の課題を解決するという社会的な重要性をも有するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日仏に関する文献調査・聞取り調査のいずれも計画通りであり、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は前年度までに整理した暗号資産・NFTに関する基本的な法制度の枠組みに即し、これらの財を担保化するに際して有益な枠組みや処理基準を提示する。 この検討にあたっては、当初の計画に即し、フランスにおける実情をさらに調査し、日本の学説や実務に関する補充調査をも実施し、研究報告を経て論文としてまとめることを計画している。
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Causes of Carryover |
97円の次年度使用額が生じたものの、研究は予定通りに執行された結果であり、2024年度予算とあわせて適切に利用する。
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Research Products
(2 results)