2022 Fiscal Year Research-status Report
裁判所による著作権法の積極的な解釈ー権利制限規定のあり方の議論に向けて
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22K01292
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
渕 麻依子 神奈川大学, 法学部, 准教授 (50771713)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 著作権法の解釈 / 法解釈 / 権利制限規定 / 柔軟な解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しく多様な著作物の利用態様にも柔軟に対応するためにアメリカのフェア・ユース規定をモデルとする一般的な権利制限規定を著作権法に導入するための議論が重ねられてきたにもかかわらず、これまでのところ実現に至っていないというわが国の状況を背景とするものである。そこで、どのような権利制限規定を著作権法の中に取り入れるかという議論ばかりでなく、裁判所が既存の権利制限規定を積極的に解釈できるのかを論じることにより問題を解決できるのではないかという見通しにより研究を行う。 初年度である2022年度は2つの方針により研究を進めた。第1には、本研究がなぜ必要であるかその問題状況をさらに明らかに具体的にすることである。そこで、本研究の着想のきっかけでもあり、本研究に先立つ基盤研究C「英国におけるフェア・ディーリングの本質は何か」と本研究を架橋する「権利制限法理の歴史的展開(1)」神奈川法学55巻3号を公表する(当初2022年度内に刊行予定の号であったが事情により2023年度に刊行される)。これは第1回であり問題意識をまずは明らかにするものであるが、今後、権利制限規定の積極的な解釈が必要とされる背景・状況を明らかにしていく。第2には、日本の裁判所が著作権法にかぎらずひろく知的財産法に関してどのような解釈を行なってきたかを検討することである。この点につき、グループの名称に対しパブリシティ権が認められるのかが問題になったFEST VAINQUEUR事件について商事法務知的財産判例研究会にて報告を行い、そこでの討論を踏まえた内容をLaw & Technology98号で公表した。また、「取引の対象としての商標 ー商標の機能を考える手がかりとして」(神戸法學雜誌72巻3号)では、不正競争防止法による保護を受ける地位に関する古い裁判例を取り上げた研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、COVID-19の状況の状況の変化がいまだ読めないところもあり当初計画していた国外出張を見送った。しかし、国内では、対面での研究会の参加やそこでの報告も実現しており、また、資料についても、本研究に先立つ研究課題の実施のために収集済みであったものを含めて検討を進めている。そうした研究の進展にあわせて、研究実績の概要で述べたとおり「権利制限法理の歴史的展開」の公表とその準備を進めており、おおむね順調に進展していると評価しておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も当初の研究実施計画にしたがい、資料の収集とその検討を進めるほか、他の研究者の批判やコメントを受ける機会を確保しつつ、論文発表によって成果を公開していく予定である。2023年度に入るのに前後して海外渡航をめぐる状況が大きく改善しはじめたように思われるため、本年度からは国外における調査等も実施可能であると考えられる。
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Causes of Carryover |
2022年はCOVID-19の流行が収束したとは言い難く、とりわけ海外への研究出張の計画が立てられなかったことに起因する。その後、渡航をめぐる状況に改善が見られるため、延期していた出張や資料収集を行うことにより2022年度の残額を適切に使用する予定である。
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