2022 Fiscal Year Research-status Report
途上国における「政府関与を要する公共財」の供給と政府―市民関係が果たす機能の研究
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22K01301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森川 想 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10736226)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 用地取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スリランカの社会基盤事業に伴う用地取得・住民移転を対象として、政府―市民関係の在り方が、弱いガバナンス構造の下でも政府の関与を必要とする公共財供給の実現をどの程度、またどのように左右するかを明らかにすることである。 研究計画は「①用地取得・住民移転にかかわる職員(人的資源)の活動の実態と流動性の把握」「②政府市民関係と負担分配としてのco-productionの実現メカニズムの関係の解明」の二つの課題で構成されており、初年度となる2022年度は職員に対するインタビュー調査を実施しながら道路事業に関する最新情報を収集し、翌年度の住民に対する調査の準備を行うことになっていた。 今年度は当初の研究計画に従い、職員に対するインタビュー調査を実施した。従前の研究蓄積を踏まえて、高速道路事業に関する用地取得も引き続き本研究の重要な研究対象ではあるが、今回の調査では、灌漑インフラ整備に伴う用地取得に着目し、州を横断するインフラ整備を担当するスリランカ中央政府の灌漑局と、南部州の灌漑局の職員に対してインタビュー調査を実施し、それぞれの組織構造や職員の採用・キャリアパスの在り方、市民との関係性の違い等について聴き取りを行った。 組織を構成する職員に対する可能な限り網羅的な調査を心掛けたため、今回対象とした職員が必ずしも全員直接的に用地取得・住民移転過程に携わる/携わった者というわけではないが、対象組織を限定したことで行政職員の変動の実態と人事管理のプラクティスをかなり詳細に把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の「①用地取得・住民移転にかかわる職員(人的資源)の活動の実態と流動性の把握」「②政府市民関係と負担分配としてのco-productionの実現メカニズムの関係の解明」の二つの課題のうち、2022年度は現地職員に対するインタビュー調査を通じて、「①用地取得・住民移転にかかわる職員(人的資源)の活動の実態と流動性の把握」に取り掛かる予定となっていたが、現地調査を通じてこれらに関する詳細な実態把握を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初想定していた高速道路とは異なる社会基盤事業の用地取得に関する職員調査に着手したため、今年度は用地取得に関わるか否かにかかわらず、組織内の構成員に対する網羅的な実態把握を行うことに努めた。当初計画では、来年度にかけて職員とその活動の多様性・流動性に着目し、投入された人的資源の実態およびそれが人々(主に移転住民)の認識やコミュニティに与えた影響について調査することになっている。従って、来年度はより用地取得・住民移転に焦点を当て、フィールド調査を通じて、研究計画に記載の①事業やコミュニティごとに担当者がどのように変容していったか、なぜそのような変動が生まれたのか度は②彼/女らが移転コミュニティや住民に対してどのような活動を行ったかを把握することに軸足を移していく。
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Causes of Carryover |
本研究で実施するフィールド調査に当たっては、申請時記載の通り年間125万円程度の出費が必要となる。本年度は他資金が利用可能であったため、本研究費からの支出を抑えることができた。次年度使用額と来年度に予定されていた予算を利用することで、当初想定した規模でのフィールド調査ならびに成果報告を行う。
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