2023 Fiscal Year Research-status Report
自由民主主義の危機とデモスの再検討―哲学とフェミニズムの導入による学際的研究
Project/Area Number |
22K01308
|
Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
山崎 望 駒澤大学, 法学部, 教授 (90459016)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 圭 立命館大学, 法学部, 准教授 (90720798)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 民主主義 / 現代思想 / 嫉妬 / エクリチュールフェミニン / ジュディス・バトラー / コリーヌ・ペリュション / 生と死 |
Outline of Annual Research Achievements |
今期は各自で研究を進めると共に、研究会を二回開催し研究成果の確認と統合を図る共に隣接分野で最先端の研究を進めている研究者を招聘することで、研究成果全体の位置づけにつても模索した。 研究代表者の山崎は、柄谷行人の交換論を足掛かりに、文化人類学と哲学において主に研究が進められている贈与論について考察を深め、商品交換による交換が主流となった現代の資本主義社会とは異なる交換システムの社会において、民主主義がいかなる形態をとり得るか、について考察を深めた。研究会における報告と議論を経て内容を再検討し、書籍に形で公刊する予定である。 研究分担者の山本は、「政治的なもの」と現代思想の関係についての研究を進展させると同時に、精神分析的政治学の確立に歩みを進めている。現代社会でも問題化している嫉妬という人間の感情について、思想史的観点および現代社会における観点から分析を行い、嫉妬と民主主義の関係について考察を深めた。その成果は山本圭『嫉妬論』光文社新書として公刊され、広く多分野にわたる反響を呼んでいる。 また既述した研究会では、第一回は伊藤潤一郎(新潟県立大学)、五十嵐舞(新潟県立大学)両氏を招聘し、各々「コリーヌペリション『糧』をめぐる考察」と「可視/不可視の差別とバトラーの認知に関する図式について」を、第二回には清水知子(東京藝術大学)、横田祐美子(横浜美術大学)両氏を招聘し、各々「死/生時代の政治と芸術」と「エクリチュールフェミニンにおける言語の政治性」について講演を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代思想、とりわけ哲学の観点からのアプロ―チとして、バトラーやペリュションなどの世界的な影響力を誇る論者の思想を考察すると同時に、エクリチュール・フェミニンや「嫉妬」の概念、また人と自然/動物の関係性の考察を通じて、所与とみなされがちな「現実」を揺らがす諸構想についての研究を深めることに成功しつつある。他方、現代民主主義論において重視されている、政治の前提条件を構成する「政治的なもの」に着目することで、既存の政治そのものを自明視しない政治の在り方の模索も行っている。この「政治的なもの」の観点から、代替的な政治/社会構想を展開する準備が整いつつある、と評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究で深めてきた哲学についての理解と、「政治的なもの」に着目した政治学の接点をより明確化するために、招聘した/する研究者との協働作業も視野に入れて研究業績を独創的な形でまとめるために必要な作業を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、当初研究会の開催場所までの旅費が必要と想定されていた研究者がやむを得ない理由によりオンラインによる参加となるなど、想定外の出来事に伴い旅費を中心として次年度使用額が生ずることになった。 使用計画としては研究会開催の候補地の選定に工夫をするなど、より予測可能性が高い形で研究会開催の計画を前倒しで行う。 また研究成果をまとめるにあたり必要に応じて、隣接諸分野の研究者の協力を仰ぐことも想定している。
|