2022 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおけるムスリムの市民権行使の条件:リベラルな市民権による排除と包摂
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22K01312
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
浪岡 新太郎 明治学院大学, 国際学部, 教授 (40398912)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イスラーム / フランス / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、リベラルな市民権の典型とされ、欧州最多の移民出自ムスリム国民が定住するフランスにおける包摂の事例研究に取り組む。その目的は、ムスリムの市民権行使の条件を明らかにし、リベラルな市民権のより包摂的なモデル構築に寄与することである。具体的には、排除が特に顕著なア)政治参加、イ)教育、ウ)治安の分野の事例を扱う。 リベラルな市民権は、人権や国家の宗教的中立性などのリベラルな法規範を前提とするので、多様な人々の包摂が可能であると考えられている。しかし、この市民権によって排除されるマイノリティも存在する。ムスリムはその典型である。国籍を有し形式的には市民権をもつとしても、学校でのヒジャブ着用などの「ムスリムとみなされる際の特徴」がリベラルな法規範と矛盾すると判断され、登校を禁じられるなど、かれらは市民権行使から実質的には排除される傾向がある。ただし、こうした判断に対抗し、市民権行使が実質的に可能になる、包摂の事例も存在する。 今年度は「政治参加」についての調査を行った。具体的には、リヨン大都市圏郊外のヴォーランヴラン市における住区評議会のメンバーへインタビューを行い、住民による政治参加の制度の中で、どのようにイスラームに関連する争点が扱われているのかを確認した。実際には、イスラームに関する争点は注意深く避けられていることが確認できた。また、リヨン大都市圏ヴィルユルバンヌ市では、イスラーム文化センター兼モスクの改築において、公的支援の可能性についてモスク関係者へインタビューを行った。実際には、地方自治体からは一切の支援を拒否するという立場を内々に伝えられており、公的支援は法律的に可能だとしても、モスク関係者は申請を控えていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は2回渡仏することができ、地方自治体の協力、ムスリム関係者の協力を得ることができたので、政治参加について、順調にインタビューを進めることができた。また、これまでの研究成果と併せて、出版へ向けて原稿執筆を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、今年度も2回は渡仏し、政治参加に加えて、教育分野についての調査を開始視したいと考えている。また、年度末には、フランスのムスリム系マイノリティについての研究者を迎えて、国際シンポジウムを企画したいと考えている。
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Causes of Carryover |
想定よりも滞在費が安かったために、次年度使用額が生じた。
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