2023 Fiscal Year Research-status Report
Normalization and Equalization Revisited in the Internet Campaigning of Local Elections: Their States and Determinants
Project/Area Number |
22K01319
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
岡本 哲和 関西大学, 政策創造学部, 教授 (00268327)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ネット選挙 / 地方選挙 / 通常化 / 平準化 / 政治コミュニケーション / 政治情報 / 選挙運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
インターネットをめぐる政治学研究において最も重要な研究テーマの1つである「平準化-通常化」に焦点を合わせて、「平準化-通常化」の進行状況に影響を及ぼしている要因を明らかに知ることが本研究の目的である。これに関し、これまでの研究のほとんどは、平準化ないしは通常化の状態が各国・各地域において「どのように」進行しているかに焦点を合わせていた。それに対し、どのような要因が平準化(ないしは通常化)の進行を促すかについては、ほとんど研究されてこなかった。2023年度末の時点においても、この問題に取り組んだ研究は、管見では見受けられない。 この問題に取り組むために、2023年度は主として(1)「通常化―平準化」の程度を測定するための指標の開発(これについては、2022年度から継続して実施)、(2)分析のためのデータの収集・整理及びデータセットの構築、の2つの作業に取り組んだ。 (1)については、前年度での研究実績である「通常化―平準化指数」および「水平的平準化指数」の指標の作成とそれを用いた分析に加え、各候補者によるインターネット利用の状態を1次元データと捉えて、選挙区内における候補者間でのその類似度を利用して平準化の度合いを測定するための、新たな「水平的平準化指数」を開発した。(2)については、2023年4月の大阪市議会議員選挙等の候補者データを用いて、選挙区ごとに新たな水平的平準化指数を算出した。現在まで「類似度が高い選挙区ほど平準化度が高い」と見なしている。加えて、各選挙区の特性データ(候補者数、選挙区定数、選挙区候補者平均年齢、現職候補が全候補者に占める割合、選挙競争率、65歳以上人口割合、国勢調査ネット回答世帯割合など)を加えて、分析用のデータセットを作成できた。(3)については、このデータを用いて質的比較分析等による分析作業を進めた。これについては2024年度も継続して行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな課題は、どのように「通常化―平準化」の程度を測定するための指標を開発するかである。「通常化―平準化」の進行に影響を及ぼす要因を明らかにするためには進行状況を示す指標が必要となる一方で、先行研究ではその基準は必ずしも明確には示されておらず、数量的にその進行状況を示すための指標も存在しなかったからである。これについて、研究代表者は「通常化―平準化」を一次元の尺度として捉える「通常化―平準化指数」、(b)「通常化か平準化か」ではなく「どれだけ平準化が進行しているか」を図るための「水平的平準化指数」の2種類の指標を作成した。これらの指標を用いた分析の結果の一部は、すでに学会発表及び論文の形で発表されている。 加えて、2023年度においては選挙区内における候補者間でのその類似度を利用した、新しい選挙区ごとの水平的平準化指数を開発した。もっとも、今後の分析作業の過程において、その指標の作成手順等に修正が加えられる可能性もあるが、もっとも重要な課題であった「通常化―平準化」の程度を測定するための指標の開発はおおむね完了したと考えられるため、この点において研究はおおむね順調に進行していると判断できる。 また、分析のためのデータセットについても作成作業は進められている。2023年4月に実施された大阪市議会議員選挙については、24の選挙区について水平的平準化指数の算出を行った。また、水平的平準化指数に影響を及ぼす独立変数(条件)の候補である諸変数(候補者数、選挙区定数や選挙区候補者平均年齢などの候補者に関わる要因とともに、人口密度や65歳以上人口割合、国勢調査ネット回答世帯割合など選挙区に関わる要因を含む)についての入力も行った。大阪市議会議員選挙以外の2023年に実施された地方選挙についても、58の都道府県・政令市の議員選挙についてのデータを収集することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度はこれまでに作成したデータおよび研究代表者が開発した指標を用いて、通常化―平準化の進行状況に影響を及ぼす要因を明らかにするための作業を中心に研究を進める。これに関して、研究代表者がこれまでに開発した通常化―平準化についての3つの指標について、それぞれを用いた分析結果の比較を行うことも今後進めていく。今年度中に、研究成果の一部を学会を通じて公表する予定がある。 分析手法については、質的比較分析(Qualitative Comparative Method:QCA)の手法をも用いることを予定している。本研究で扱うデータの多くが地方選挙における選挙区レベルのものとなり、候補者レベルでの分析ほど多くのケース数が確保できないこと、そして通常化―平準化の進行に影響を及ぼす要因については先行研究がほとんどなく分析が多分に探索的なものとなるために、複数の要因(条件)の組み合わせと結果との関係についての検証が可能となることが質的比較分析を用いる理由である。2023年度に引き続き、各分野の質的比較分析についての研究を参照しつつ手法のさらなる習得に努めるとともに、分析に用いるソフト・パッケージの利用方法についても習得に努める。 加えて、地方議員を対象として、インターネット利用についての詳細な目的や動機、その効果等についてのインタビューもしくはアンケート調査を実施する。これによって、データ分析で得られた知見を補完する。 なお、本研究テーマの背景には「日本の選挙における候補者のインターネット利用の実態」という大きな研究関心がある。研究代表者はこれまでの国政選挙において、このテーマに関する調査を行ってきた。2024年度中に衆議院選挙が実施される場合はデータの蓄積を目的として、それについての調査を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたもっとも大きな理由は、2023年度中に衆議院が解散され、衆議院選挙が行われる可能性が高かったことである。本研究課題は主として地方選挙を研究の対象としているが、「通常化―平準化」の検証という点で、国政選挙の候補者によるインターネット利用も分析対象の一部となる。さらに、本研究テーマの背景には「日本の選挙における候補者のインターネット利用の実態」という大きな研究関心が存在し、本研究テーマに関連する基礎的なデータの蓄積を図るために、国政選挙の候補者を対象とする調査も必要となる。しかし、結果的に衆議院が解散されなかったことによって次年度使用額が生じた。2024年度も衆議院解散を見据えながら研究を進めるが、研究の最終年度であるため、衆議院解散がない(もしくはその可能性が高い)場合には、地方選挙を対象とする調査(有権者調査を含む)に次年度使用額を充当する。
|
Research Products
(1 results)