2023 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア期保守党の政治思想――『クォータリー・レビュー』分析を中心に
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22K01323
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
遠山 隆淑 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系人文グループ, 准教授 (60363305)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロバート・ガスコイン=セシル / 第2次パーマストン内閣 / 第3次ダービー内閣 / 保守党 / 『クォータリー・レビュー』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、19世紀後半における保守党の大物政治家ロバート・ガスコイン=セシル(第3代ソールズベリー侯爵)が1860年代に『クォータリー・レビュー』に寄稿した諸論文の読解を中心に、党首である第14代ダービー伯爵や同党下院指導者のディズレイリらの政治状況認識にも目を配りながら、第三次パーマストン自由党政権に対する同党の政治姿勢について分析を進めた。 自由党支持のジャーナリストのW・バジョットは、主著『イギリス国制論』で、第二次パーマストン政権期の政治的安定を高く評価した。彼によれば、この政治的安定の理由は、自由党と保守党それぞれの多数派を占める穏健な政治家たちが、ブライトら急進的な左派や現状墨守の頑迷なトーリーを抑えるために協力しあったことにあった。たしかに、1859年の自由党の結党以降、自由党の穏健派と急進派との潜在的な対立が続いており、パーマストンは種々の法案を通すために、密かにダービーと連携した。ダービーもまた、ジェントルマン支配の継続のために、この方針をとり続けた。これを「パーマストン=ダービー連合」という。ただし、保守党側の議論を読むと、この連合は、両党の信頼関係に基づく安定的な協力関係に支えられたものではなかったことが看取できる。たとえば、ダービーの方針選択は、少数党ゆえの消極的な理由によるものであり、多数党の地位を回復できればいつでも破棄可能な方針であった。セシルの諸論文にも同様の理解があった。1860年代前半の彼の議論は、自由党内部の党派構成や指導者間に垣間見える内部対立の様子にかんする指摘に集中している。セシルは、自由党におけるウィッグと急進派の連携を「原理」を欠いた野合に過ぎないと再三批判しているが、その議論からは、自由党の内部事情を逐一分析することで、自由党の党基盤の危うさを見抜き、政権党への返り咲きの機会を見いだそうとする彼の意図を読み取ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の中で遅れた研究状況がそのまま現状へとずれ込んでしまっているため、おおよそ1年弱の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方向性については現状のままでよいと考える。現在進めている文献の調査をさらに堅実に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で研究の進捗が遅れがずれ込んだため。
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