2022 Fiscal Year Research-status Report
地方自治と「行政の非効率・ムダ」論の研究:水道事業の民営化と再公営化の分析
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22K01334
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
水谷 利亮 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00310897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水道事業 / 民営化 / コンセッション方式 / 官民連携 / 再公営化 / 非効率・ムダ |
Outline of Annual Research Achievements |
現地調査としては、2022年度からコンセッション方式による上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)を実施している宮城県において、柴田町と仙台市内の市民団体に対してヒアリング調査を実施し、宮城県と仙台市には文書での質問を出して回答を得たこと、また、企業団による水道事業の広域化と官民出資会社の設立で官民連携を行っている群馬東部水道企業団に対してヒアリング調査を実施するとともに、企業団の南部山浄水場の視察を行った。 宮城県は、PFIの一類型のコンセッション方式導入による水道事業で、民間ノウハウも十分に活用することで、20年間に経費が337億円削減されなど予算の節約・合理化や水質・サービスの維持などのメリットを指摘する。水道事業の民営化に疑義をもつ市民団体などの分析では、将来の水道料金値上げや水質・サービスの低下、災害対応・危機対応がおろそかになることや長期的に自治体の職員と技術が自治体から失われることへの危惧、情報公開が不十分などといった問題点が指摘され、宮城県と見解が異なる。宮城県では、特別目的会社(SPC)がOM会社を設立して実際の浄水場や下水処理場の維持管理を行っており、OM会社の経営やあり方も視野に入れた分析をする必要がある。 群馬東部水道企業団では、企業団(出資51%)と民間企業グループ(出資49%)が官民出資会社の株式会社群馬東部水道サービス(GTSS)を設立し、両者からGTSSに職員派遣を行って業務委託等を行いながら、官民双方の技術や知識と職員を活かし、公正で効率的な業務運営をめざしている。合わせて群馬県企業局との事業統合で県から資産譲渡を受ける形で垂直統合を実現し広域化によって効率化を図っていることが指摘できる。委託契約期間は2017~2024年度であり、企業団では現在、事業評価や次回の新しい委託契約に向けたあり方を検討する必要がでてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
宮城県の上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)では、関係する2町でヒアリング調査が実施でき、関連する市民団体にも調査と資料収集ができた。他方で、コンセッション方式の導入自治体である宮城県(水道経営課)やSPC(特別目的会社)の「株式会社みずむすびマネジメントみやぎ」などにヒアリング調査を行う必要があるが、2022年度は実現しなかった。2023年度以降に、調査依頼を行いたい。 宮城県と群馬県以外に、浜松市における調査を実施する予定でいたが、コロナウイルス感染症のまん延により調査日程の調整ができず、現地調査が実施できなかった。 他方で、文献研究を中心に、水道事業の民営化と再公営化に関する議論の整理・分析は漸進的に行っているが、2022年度の調査・研究の内容を論文などの形でまとめることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コンセッション方式の導入が上水道事業では見送られたが、下水道事業において既に導入している浜松市の取り組みに関する自治体と関連団体に対するヒアリング調査と資料収集を行う予定である。また、2022年度に実現できなかった宮城県に対するヒアリング調査と、「みやぎ型管理運営方式」に関する調査・分析を実施したい。 文献研究については、水道事業の民営化と再公営化に関する議論の整理・分析を引き続き行う。 2023年度におけるそれらの調査・研究内容と2022年度の調査・分析の内容をふまえた研究論文を作成する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症のまん延により、リスクマネジメントの必要から予定していた現地でのヒアリング調査を十分に実施することができなかったために、旅費を中心に次年度使用額が生じた。
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