2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of 'Wellbeing and Sustainable Society', in particular reference to economic thought of Marshall, Ruskin and Fukuda Tokuzo
Project/Area Number |
22K01412
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
西沢 保 帝京大学, 経済学部, 客員教授 (10164550)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | マーシャル / ラスキン / 福田徳三 / 良き生 / 持続可能な社会 / 厚生経済 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
マーシャル、ラスキン、福田徳三を中心に「良き生(wellbeing)と持続可能な社会」を追及した古典的経済思想の歴史的再構成を目指す方向で研究を進めた。マーシャルの有機的成長論を、その要件である人の能力、教育、環境とともに著作に即して検証し、持続可能な社会の構想を究明しようとした。ラスキン、ホブソン、福田徳三についても研究を進め、人の性格形成・能力、そして環境・自然(空気・水・大地)、文化的最低限を包括的にとらえた古典的経済思想の再構成を目指した。 それは、近刊予定の『評伝 福田徳三-経済学の黎明と展開』(日本経済評論社、5月刊行予定)のいくつかの章題・副題、「マーシャルと福田徳三」、「福田『経済学講義』とマーシャル『経済学原理』ー有機的成長と厚生経済論」、「聖トマスへの回帰とラスキン的厚生経済学」、「福田、ホブソン、イギリス福祉国家」などにも表れている。 これらの一部は、北海道大学経済学部の研究会でも「マーシャルと福田徳三ー厚生経済をめぐって」として報告された(2022年11月5日)。また、執筆中の『経済思想15講』(新生社)の「冷静な頭脳と暖かい心情」、「生こそ富(No Wealth But Life)」、「Wellbeingと持続可能な社会の探究」などでも検証されている。 マーシャルの『経済学原理』の翻訳を進めた。二つの序文から第1編、第2編、第3編、第4編、第5編、第6編、付録、数学付録まで、全部の訳を見直し、ファイルを出版社に送ったところである。この訳業の過程で学んだことも踏まえ、次年度には、ヨーロッパの学会でマーシャルの持続的成長を中心に報告をしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍でありヨーロッパに行って、調査・資料収集を行うこと、学会報告をはじめ、対面での研究交流を行うことは、依然としてむずかしいことはあるが、マーシャル、福田徳三を中心に研究・作業は進んでいるものと思われる。 2022年5月にフランスのニース大学で行われた Arena 教授の退官を記念する研究集会に招待されたが、コロナ禍であり、参加を断念した。 しかし、研究は進めており、『評伝 福田徳三-経済学の黎明と展開』は間もなく刊行予定であり、マーシャル『経済学原理』の翻訳作業も進み、序文、第1編から第6編までの本文、付録、数学付録全部の翻訳原稿を出版社に送ることができた。 次年度には、イタリア、トリノで開催予定のイタリア経済思想史学会で、マーシャルの「良き生(wellbeing)と持続的成長」に関する報告をしたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.マーシャルの多面的な'wellbeing'(physical and moral, economic and moral)の思想と持続的成長を中心に論文をまとめ、次年度のヨーロッパの学会で報告をしたい。 2.マーシャル『経済学原理』(岩波文庫)の訳業は、今後、修正・改訂、校正、注釈、参考文献等、かなりの基礎作業が予想される。そのような作業を通しても、マーシャル研究を深めることを進めたい。 3.近刊予定の『評伝 福田徳三ー経済学の黎明と展開』(日本経済評論社)は、私の福田研究の一部である。今後、さらに『福田徳三とその時代(仮題)』(信山社)のような、より包括的な福田徳三研究をまとめたい。 4.刊行中の『福田徳三著作集』の編集補助作業を推進する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で移動が困難であり、海外(および国内他大学等)での調査、研究の対面交流が出来なかったことが最大の理由である。これからヨーロッパ(イギリス、イタリア)での資料調査、研究の対面交流を計画している。国内での学会参加も計画している。
|