2023 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・ケインズ派貨幣信用理論に基づく現代金融理論と金融不安定性に関する研究
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22K01414
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
二宮 健史郎 立教大学, 経済学部, 教授 (30273395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見 博之 大分大学, 経済学部, 教授 (10264326)
得田 雅章 日本大学, 経済学部, 教授 (10366974)
吉田 博之 日本大学, 経済学部, 教授 (80308824)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 金融の不安定性 / ミンスキー / 非線形経済動学 / マクロ時系列分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度において、以下の業績を公表した。(1)共著書:二宮健史郎・得田雅章(2024)『金融構造の変化と不安定性の経済学』日本評論社、(2)査読付論文:Ninomiya,K.(2023), Debt Burden, Investment, and Profit-Sharing, Evolutionary and Institutional Economics Review 20(2), pp.287-306、(3)DP: Ninomiya, K.(2023), Financial Cycles and Instability in a Keynes-Wicksell Model, Rikkyo Institute of Economic Research, Discussion Paper (E-5)、(4)紀要論文:二宮健史郎(2024)「物価、利子率の理論と金融の不安定性:基本マクロ経済モデルの再検討と展望」『立教経済学研究』第77巻第4号(刊行予定)。 (1)は、研究分担者(得田)との共著書であり、非線形経済動学を適用した金融不安定性のマクロ動学モデルにおいて金融構造の変化と経済の不安定性、循環を理論的に検討し、構造VARモデルを適用して実証分析を行なったものである。(2)は、負債を考慮したモデルにおいて、異なるProfit -Sharingルールが体系の安定性に与える影響を検討したものである。(3)では、競争・寡占の混合体系におけるKeynes -WicksellモデルにLR(貸し手のリスク)型の金融構造を導入した。そして、寡占経済において金融の不安定性を誘発するLR型の金融構造が、競争経済においては経済を安定化させることを示した。但し、競争経済が望ましいと結論づけるのは早計である。(4)は、本研究課題に関する学説史的展開を含む基本的なサーベイ論文である。 (1)(2)は、本研究課題の基盤となる成果、(3)は基礎的モデルであり、本研究課題の目的の達成のために極めて重要なものである。(4)のサーベイ論文にも示しているように、これらの諸研究の拡張、精緻化により研究の発展が期待される。 研究分担者は、以下の論文を公表している。 得田雅章「マクロ経済変数と資産の価格」『資産評価政策学』第24巻第1号, pp.1-9.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、本研究課題の一つの大きな目標であった共著書(1)の刊行に向けて努力し、極めて順調に達成することができた。また、英文査読誌に論文が掲載されている((2)の論文)。ディスカッションーパーも刊行し、英文査読誌に投稿予定である((3)の論文)。同論文は本研究課題の基盤となるものであり、同論文を基にさらなる研究の進展が見込まれる。さらに、新たな視点を考慮した論文のサーベイも行い((4)の論文)、研究の方向性もより明確になったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍により制限されていた共同研究者との対面での研究打ち合わせを再開し、研究会での報告(第23回現代経済学研究会(大分大学))も行なった。研究分担者との新たな共同研究にも着手している。このような活動をより積極的に行うことにより、論文の質の向上に努めたい。 具体的には、競争・寡占経済の混合体系における財政政策の効果の検討、競争経済におけるインフレ・ターゲットの効果の再検討、国債の動態を導入した金融の不安定性の検討等を行いたい。さらに、研究分担者との共同研究により、構造VARモデルを適用した実証研究、ゲーム理論を適用した制度的枠組みの理論的研究なども行いたい。2024年度もそれらの成果を積極的にディスカッションペーパーとして公表し、査読誌への投稿、掲載に繋げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度は対面での研究報告、研究分担者との研究の打ち合わせを行なったが、コロナ禍の影響による2022年度の残額を消化するほどではなかったためである。物品、消耗品等ついては、ほぼ計画通りの支出を行なっており、研究は極めて順調に遂行している。今年度は、これまで以上に対面での研究打ち合わせを行い、論文の質の向上、共同研究の進展を目指していく所存である。
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