2022 Fiscal Year Research-status Report
自由社会における暗黙知と信念:マイケル・ポランニーのプロフェッショナリズム
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22K01415
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
今池 康人 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (90935511)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | マイケル・ポランニー / 学問の自由 / 自生的秩序 / 暗黙知 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては主として自由社会における専門家の必要性を明らかにした。10月に保守的自由主義研究会にて報告を行い、その後、11月には社会思想史学会第47回全国大会において同様の報告を行った。これらの報告で得たコメントを元に論文としてブラッシュアップを行い、福井県立大学経済経営研究に投稿し、2023年3月発行の第45号に論文「自由社会における専門家の役割-マイケル・ポランニーのプロフェッショナリズム-」が掲載された。具体的な研究内容は以下の通りである。 ポランニーは社会を人に設計された秩序ではなく自生的秩序に任せるべきと考える。しかし、一般的な自生的秩序論とは異なり、ポランニーは社会における専門家の役割を強調する。専門家たちは各々の共同体を作り、その中で相互調節を行う。そして、各種の専門家たちは自身の職務を全うしなければならず、一般公衆はそうした専門家たちを尊敬し、自由な活動を認めなければならない。 また、このような相互調節は共同体内だけでなく、共同体と市民の間でも行われる。専門家たちは専門家同士で議論を行うだけでなく、一般公衆に自身の行いを認めてもらう必要が生じる。そのために、自身の研究成果を社会に広め、一般公衆を説得しなければならない。ポランニーの自生的秩序論にはそうした専門家・一般公衆間の相互調節も含まれる。 こうした専門家について、ポランニーはまずは科学者を念頭に置き議論を行う。しかし、この議論は科学者だけでなく、その他の学者、著述家、ビジネスマン、ジャーナリスト、そして政治家をも含んだ広い概念である。 昨今、専門家の助言は軽視され、専門家もまた一般公衆に自身の成果を発信することを怠る世の中へと陥っているのではないであろうか。そうした社会においてポランニーの思想は重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定度通り、研究会・学会報告及び論文投稿を行ったため、(2)と評価した。 具体的な活動報告に移ると、2022年10月に保守的自由主義研究会にて報告を行い、その後、2022年11月には社会思想史学会第47回全国大会において同様の報告を行った。 これらの報告で得たコメントを元に論文としてブラッシュアップを行い、福井県立大学経済経営研究に投稿し、2023年3月発行の第45号に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は主としてポランニーの学問の自由に関する研究を行う。可能なら学会・研究会での報告を行いつつ、年度後半に論文を投稿する予定である。 また、2023年度夏季休暇中にシカゴ大学図書館へポランニー書簡の調査へ赴く予定であったが、大学業務との兼ね合いから難しいことが判明した。書簡調査については2023年度春期休暇中もしくは2024年度夏季休暇中に行う。 2024・25年度はそれらの調査をもとにポランニー書簡に関する研究を行う。最終年度である2026年度はそれらをまとめ海外のポランニー学会であるPolanyi Societyにおいて報告もしくは論文投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
謝金・文献複写費について、当初の予定と異なり使用の必要がなかった。また、ノートパソコンの購入についても当初の予定より減額されたため、次年度使用額が生じる結果となった。 次年度以降、アメリカへと書簡調査に赴く予定であるが、現在は円安傾向にあるため当初の予定以上の額が必要となると予想される。次年度使用額については海外旅費の補填に充てるほか、文献購入費としても使用する。
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